恋愛実践録65
「それ以外のそちらの申し出は一切却下させて貰うとして、さてこの余興、これからどうしようかしら。何かお望みはある?」と愛人は客に向かって言い放った。
人里離れた山間の別荘。
敵たる愛人は客の旦那の他にボディーガードとして屈強の男達三人を引き連れ、ソファーに着席するなり機先を制するように、ホスト亭主を指差し客に向かって威嚇するようにまくし立てた。
「そちらが連れて来た男はそちらの提案通り影として扱い、こちらも一切無視スルーして影として扱うけれども、こちらが連れて来たボディーガードは文字通りボディーガードであり、私の危機を暴力装置として暫時排除していくつもりだから、それは承知して頂戴」
痩せて妙に神経質な感じのする客の旦那は、まるでロボットさながらに、一点を見詰め、感情が失せたように座っている。
その旦那と同じく三人のスーツを纏った屈強なボディーガード達も、ホスト亭主をまるで無視して、仁王立ちしたまま押し黙り、無機質な不気味さを周囲に醸し出している。
ホスト亭主は客の背後にまるで影の如く張り付き、渋面を作ったまま俯き加減に控えている。
愛人が続ける。
「それ以外のそちらの申し出は一切却下させて貰うとして、さてこの余興、これからどうしようかしら。何かお望みはある?」




