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恋愛実践録64
私の命と貴方の命を別れさせる為に、私は影たる貴方に無惨に棄て去られ、永遠の愛を手に入れるのです。だからどうか私との約束果たして下さい。お願いします」と客は言った。
客が言う。
「それと、もう一つ約束して欲しいのです」
ホスト亭主が怪訝な顔付きをして尋ねる。
「…もう一つと言うと?」
「警察は勿論ですが、絶対に第三者を介入させないで下さい。貴方が一人になり、私に寄り添う冷酷な影になり、それに徹して下さい」
唇を嘗めるように固唾を飲み込み、ホスト亭主が尋ねる。
「それを自分が破ったら、貴女は何をするのですか?」
涙ぐんだのを拭いもせず客が答える。
「舌を噛み切って死にます」
涙ぐむのを指で拭いホスト亭主が再度尋ねる。
「その三者会談は愛人との最終決戦と言うよりは、自分へのさよなら決戦なのですね?」
顔を左右に振り涙を吹っ切ってから客が答える。
「そうです。私の命と貴方の命を別れさせる為に、私は影たる貴方に無惨に棄て去られ、永遠の愛を手に入れるのです。だからどうか私との約束果たして下さい。お願いします」
ホスト亭主が熱く溢れ出す涙を拭い言った。
「分かりました」




