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恋愛実践録62
「それじゃ、まるで影のような存在ですね?」とホスト亭主は言った。
ホスト亭主が嘆息してから言った。
「それじゃ、まるで影のような存在ですね?」
客が涙ぐむのを堪えつつ頷き返し言った。
「そうですね。立会人と言うよりは影としての扱いですね。それは先方にも詳細に伝えますから」
ホスト亭主が自分を指差し言った。
「先方からも自分は影として扱われるのですか?」
客が泣き笑いの表情を作り言った。
「そうですね。影は喋らないし、手も出せないけれども、一つだけ寄り添う事は出来ますから、それでお願いします」
ホスト亭主が念を押す。
「例えば貴女が殺されても、自分は警察に届ける事も出来ない影なのでね?」
涙ぐんだまま頷き客が答える。
「そうです」




