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恋愛実践録52

客の流した涙は、己の愛や幸せを奪われた者の、尽きせぬ憎悪と悲しみに裏打ちされた真正の涙だったと、ホスト亭主は考える。

電車に乗り、立ったまま車窓に張り付くようにホスト亭主は考えを巡らす。





長年ホスト稼業を生業として来た自分にも、人を見る眼はそれなりに培われていると、ホスト亭主は自負している。





心の美しさを感じ取る審美眼的感性に鑑みても、客が自分に話した美しい言葉や、ほとばしる悲しみ寂しさの吐露に嘘偽りはなかったとホスト亭主は思う。




その真心の琴線に触れたからこそ、自分は心動かされ、絶大なる正義感を以って敵討ち、復讐劇に加担したのだ。





その行いに対する悔いはあるのかと、ホスト亭主は己の心に問い掛ける。





無いと、ホスト亭主は断じる。





真正の涙。



客の流した涙は、己の愛や幸せを奪われた者の、尽きせぬ憎悪と悲しみに裏打ちされた真正の涙だった。





それは美しい心が玉のように流れ落ちる涙だったと、ホスト亭主は涙ながらに回想する。




客のピュアな心の美しさが転じて、我が心に、まるで反射するが如く美しく映じたからこそ、感動し、純粋に心を尽くしたのが、この復讐劇の顛末ならば、最後まで客を信じ抜くしか無いとホスト亭主は心に念じる。





この復讐劇は客と交わした宣誓通り、お互いに惚れてはならないという、その辛い心尽くしの、言わば賜物としての命懸けの所作であり、その分、命燃え上がる恋のほとばしりだったのだとホスト亭主は思う。

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