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恋愛実践録51
誰も信じられないとホスト亭主は考えた。
電話を切り、ホスト亭主は腕を組み考える。
虚々実々の情報が縦横無尽に錯綜としている中、何が本当で何が嘘なのか分からず、誰も信じられはしないと。
うがった話し周囲にいるホスト仲間は全員愛人に篭絡された敵であると見做した方が無難だろう。
今情報を提供してくれたホスト仲間とて、味方の振りをして、実は敵であるかも知れず、その情報の真偽の程は曖昧模糊なものと言えるだろうとホスト亭主は考える。
ここまで来たら、実際に自分の眼で確かめたものしか信じられないと、ホスト亭主は独りごちる。
愛人は生きていて、自分にとっては明らかに敵であり、消息不明の客は味方であるとホスト亭主は判断を下す。
ならば為すべき事は一つしかない。
警戒怠らず、錯綜としている情報戦をかい潜り、何とか消息不明の客と接触し、事の真相を暴いて行くしか道はないと。
そう考え、ひとしきり瞬きを繰り返した後、一度深呼吸してからホスト亭主は立ち上がり、身支度をし始めた。




