恋愛実践録46
客が殺人犯となっても、我が慕情は益々募るばかりなのをホスト亭主は心の底で感じる。
そんなホスト亭主に客から「私は憎い愛人を殺してしまいました。あんな女殺す価値も無いと思っていたのに私は敵討ちを果たし、殺してしまったのです。もうこれで私に思い残す事はありません。さようなら」と書かれた一通のメールが届いた。
反射的にホスト亭主は客に電話を掛けたのだが、客の電話は電源が切られていて音信不通となっている。
ホスト亭主はおののきうろたえ、震える手で何度も何度も電話を掛けたのだが、電話が繋がる気配は無い。
このメールが届いた事により、客に対する不信感、勘繰りは一掃されたのだが、逆に疑った分狂おしく客に対する慕情が募って行く。
ホスト亭主は考える。
どうすれば客を助けられるかを。
例えば客が自分の手を汚して愛人を自殺に見せ掛けて殺していれば、やがて警察が動き出す事は自明の理となる。
警察に追われれば、前途を悲観して客は寂しいままに自殺して果てるだろう。
客が殺人犯となっても、我が慕情は益々募るばかりなのをホスト亭主は心の底で感じる。
客が死ぬ前に何が何でも助けなければならないと、ホスト亭主は熱く決意を固め、その方法を模索し始めた。




