恋愛実践録44
「この復讐劇に盲目的に加担した俺は、結果として愛人を殺した事になるのか?」とホスト亭主は自問自答を繰り返して行く。
「客の復讐は愛人の自殺を以って成功したかに見えるが、それならば何故客に連絡が付かないのかが解せないではないか?」
「客も寂しさにかられて自殺したから連絡が取れないのだ」
「それならば追い出された旦那はどうなったのだ?」
「分からない…」
「俺は客の言葉からしか、この事柄の構図を推し量り判断しているに過ぎないのならば、客が捕まらない限り事の真相は闇の中にあり、姜として分からないではないか。この復讐劇に自分の全く預かり知らない真相があるとするならば、客の言いなりになり、この復讐劇に盲目的に加担した俺は、結果として愛人を殺した事になるのか?」
「分からない…」
「自分の預かり知らない心理的な背景、確執、葛藤、加害被害の真相を知っているのは、ここまで来たら客と、その別れたであろうと推測出来る旦那しかおらず、二人は何処で何をしているのだ?」
「分からない…」
「二人共に自殺しているのならば、俺は集団自殺劇に無知蒙昧にも加担したのか?」
「分からない…」




