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恋愛実践録42
「どうして自殺したのですか?!」とホスト亭主は支配人に尋ね返した。
翌日、自宅から出て仕事に向かう途中、ホスト亭主は客に電話を掛けたのだが、何度掛けても留守録になるだけで、客は出ようとしない。
ホスト亭主は気を揉み青ざめた。
思い余って自殺したのではないかと考え、ホスト亭主はうろたえる。
ホスト亭主は立ち止まり、狂おしく懊悩を振り払うべくかぶりを激しく振った。
己の杞憂である事を祈りつつ、とりあえず後でもう一度電話を入れる事を念頭に置き、ホスト亭主は店へと出勤したのだが、そんなホスト亭主に支配人が近寄り真剣な顔付きをして告げて来た。
「お前が担当していた、他店からの紹介客、真理さんとかいう女性自殺したらしいぞ」
青天のへきれきとも言える支配人の言葉にホスト亭主は戦慄し愕然とした。
真理と言うのは、自分が陥れ棄て去った愛人の名前であり、咄嗟にホスト亭主は支配人に向かって色めき立ち尋ね返した。
「どうして自殺したのですか?!」
支配人が首を振り答えた。
「理由は分からないが二日前に自殺して果てたらしい…」




