恋愛実践録38
「何度も言いますが、人の心は自分の思い通りにはなりませんから。その道理は自分にも当て嵌まる道理ですし」とホスト亭主は言った。
客が涙を流しながら悲鳴を上げるように言った。
「それじゃ私はどうすれば良いのですか。死ねとおしゃっているのですか?!」
「いや、違います。ですから、のっぴきならない状況になったら電話を入れて下さい。命の電話ではありませんが、電話応対ならば自分にも出来ますから」
客が顔を引き攣らせ言う。
「でも、電話では貴方の温もりも感じないし、寂しさは変わらず、状況は好転しません。だからこそ私はここに来て助けを求めているのですから!」
言葉に窮し、ホスト亭主が絶句する。
それに畳み掛けるように客が告げる。
「それにこんな無理なお願いをすれば、貴方は私をきっと毛嫌いするようになりますよね。それは取りも直さず宣誓違反には繋がらない事ではありませんか。違いますか?」
ホスト亭主が答える。
「何度も言いますが、貴女と同様に人の心は自分の思い通りにはなりませんから。その道理は自分にも当て嵌まる道理ですし。すいません…」
涙のままに客が切々と言う。
「私にはもう貴方しかいないのです。それでも駄目ですか?!」
間を置きホスト亭主が答える。
「すいません…」




