恋愛実践録33
ここで会いに行ったら己の心が崩れてしまい、家庭崩壊し兼ねないと感じ、ホスト亭主は固唾をひとしきり飲んだ後拒絶した。
異変が起きた。
さよならを告げた客が電話を寄越して来たのだ。
電話の向こうで客が矢継ぎ早に喚く。
「旦那が帰って来て、私に復縁を迫って来たのです!」
動揺している客に対して、機転を効かし、間隙を縫ってホスト亭主が質問をする。
「愛人はどうなったのですか?!」
鼻を啜り上げ、客が狂おしく喚く。
「愛人は他の婚約者を連れて来て、旦那を叩き出したそうです。まさか貴方がそれをしたのではありませんよね?!」
「まさか。自分は報告した通りの事をしたまでです。それよりもどうするのですか。旦那さんと復縁するのですか?」
客が狂ったように笑い喚いた。
「私はあんな不潔なゴミのような男と復縁などしません。でもその決意に反して、この男を拒絶したら、無性に寂しくて発狂しそうなのです。どうか私の傍に来て一緒にいて下さい。よろしくお願いします?!」
ここで会いに行ったら己の心が崩れてしまい、家庭崩壊し兼ねないと感じ、ホスト亭主は固唾をひとしきり飲んだ後拒絶した。
「いえ、今は無理です。外せない仕事が有りますから…」




