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恋愛実践録3

「でもあの人は女と見たら誰にでも優しい人だし。その優しさを自分だけに向けて欲しいと云うのが、私のジェラシーなのかもしれないし。本当に私って馬鹿な女ですよね。そう思いません?」と客は言った。

ホスト亭主が尋ねる。




「しかし何故そんな冷酷な旦那さんに、いつまでも未練があるのですか?」





客がシャンパンに口をつけて飲んでから、答える。




「私は若い頃凄くやんちゃで、家出を繰り返し、遊び歩いてふらふらしている時に今の旦那に知り合って、直後に子供が出来ちゃった婚なのですよ。私自身男運は全く無かった方だし、この旦那も知り合った頃は優しいだけが取り柄の今流に言えば、所謂草食系の人畜無害男だったし、私を大事にしてくれたから、貧乏ながらも家族皆仲良しで、最初は幸せ一杯だったのですが、旦那が運送会社を始めて、それが軌道に乗り、栄え出した頃から、旦那の女癖の悪さが始まって、私もまだ若かったし、男を見る眼が無かったし…」




ホスト亭主が眼を細め息をつき尋ねる。





「今でも旦那さんは優しいのですか?」




客がため息をつき答える。





「表明上はね、出会った頃と同じかな…」





「だから今でも好きなんだ?」





涙ぐんでから、それを指で拭い、客が答える。





「でもあの人は女と見たら誰にでも優しい人だし。その優しさを自分だけに向けて欲しいと云うのが、私のジェラシーなのかもしれないし。本当に私って馬鹿な女ですよね。そう思いません?」




沈黙が深まる時を吹っ切るようにホスト亭主が言った。





「それって本当の純愛じゃありませんか?」




客が照れ隠しするように微笑み言った。





「私は精神年齢が幼く、気持ちが旦那と出会った頃と同じなのですよ。もう三十路半ばなのに、馬鹿みたいでしょう?」





ホスト亭主が細かく首を振り、畳み掛けるように尋ねる。





「お子さんは何人なのですか?」





「男の子で、今はバンドに夢中で路上ライブやったり、自前でCD出したりして、家に寄り付きもしない状態で…」





成る程と言った感じでホスト亭主がしきりに頷きしみじみと言った。





「それじゃ本当に寂しいですね…」

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