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恋愛実践録28
「貴方が命を懸けて復讐する価値など、前の夫には有りませんから」と客は言った。
客が厳かに首を振り言い切る。
「それは止めて下さい。それをしたら私が離婚を踏み切れなくなってしまいますから…」
ホスト亭主が落胆するように視線を下に落とし、言った。
「やはり、旦那さんにまだ未練があるのですね…」
再度首を左右に振り、客が言った。
「いえ、違います。前の夫にはそんな意趣返しをする価値すら無い事が、私は改めて分かったからこそ、離婚に踏み切ったのです。だから貴方にはそんな私の未練がましさを代弁するような真似はして欲しくはないし…」
客が言葉を濁したので、ホスト亭主が視線を真っ直ぐに据え直し促した。
「それに?」
客が続ける。
「貴方が命を懸けて復讐する価値など、前の夫には有りませんから」




