恋愛実践録25
「愛人は旦那さんに飽きているのですよ。だから間違いなく自分を旦那さんと噛ませて、それを愉しみつつすげ替えし、新たなる略奪愛を堪能しようと考えているのです」とホスト亭主は客に言った。
夕暮れの喫茶店。
ホスト亭主が客に向かって確信を以って言った。
「愛人は旦那さんに飽きているのですよ。だから間違いなく自分を旦那さんと噛ませて、それを愉しみつつすげ替えし、新たなる略奪愛を堪能しようと考えているのです」
客が憤りを顕にし言った。
「そんなえげつない事を考えているのですか。あの愛人は?」
ホスト亭主が頷き答える。
「間違いありません。しかし今回あの愛人の目論みが成功すると、旦那さんは行き場を失い、貴女の処に戻る可能性がありますよね。だから自分が取る最善の方法論としては、愛人の目論み通りに旦那さんを叩き出した後に、愛人を陥れ、棄て去る手が一番かと思うのですが。どうですかね?」
客が沈痛な顔付きをして長い黙考をした後、おもむろに答える。
「いや、それをしたら私の離婚の決意が揺らぎ、私の心が又死に絶えて行く方向性だから、それは止めて下さい…」
「逆に離婚しないと心が壊れてしまう程に貴女の心は旦那さんから離れてしまったのですか?」
「そうですね。貴方が命懸けで敵討ちを断行してくれた時から、私の心は離婚を決意し、その離婚の決意は強固なものとなっていますから…」
ホスト亭主が己の辛い存念を噛み締め砕くように言った。
「分かりました。ならばドタキャンして愛人の目論みを粉砕し、罵倒して、棄て去る、事前に打ち合わせた方向性で行きましょう…」




