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恋愛実践録23
涙を拭い、客が厳かな口調で「宣誓通りにしましょう…」と言った。
息をつき、客が付け加える。
「そしてこの敵討ちがどんな形で終結しようとも、私は自分の気持ちに整理をつけられ、離婚に踏み切る事が出来ると思うのです」
眼を見開き、ホスト亭主が尋ねる。
「離婚するつもりなのですか?!」
眼に一杯に溜まった涙を順番に丹念にハンカチで拭ってから、涙声で客が答える。
「はい、止まった私の時間がそれでようやく動き出し、私はそれで私自身の時間を取り戻せると思いますから…」
ホスト亭主が納得するように相槌を繰り返し打ち答える。
「それは自分もそう思いますが…」
押し殺すように間を置いてから、ホスト亭主が辛そうに瞼を伏せてから言った。
「それじゃ、自分は貴女の門出を祝う離婚の為に命懸けで敵討ちを手伝う、それは遣り甲斐のある素晴らしい事柄だと思うのですが、その終結、離婚イコール貴女と自分の絆も終焉を迎えるのですね?」
涙をひとしきり拭ってから、泣き笑いする表情を作った後、客が無理に微笑み厳かに言った。
「宣誓通りにしましょう…」




