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恋愛実践録159
愛人の生存本能を支えているのは、生き抜いて、何が何でも客に復讐し殺してやりたいという怨みと執念だ。
同時刻。
先に消耗し倒れたら即死ぬといういらだたしい神経戦が続く中、ベッドに横たわり、愛人が断続的に襲って来る睡魔と戦っている。
浅い眠りの中、現れる悍ましい極彩色の夢に生存本能が揺さぶられるように愛人は血走った眼を見開き、暗がりの中で耳を澄ます。
短期間に病的にやつれた身体は、その分神経を過敏にし、異常に研ぎ澄まされた聴覚はどんな小さな物音をも聞き逃がさず、浅い眠りを覚醒へと誘う。
そんな愛人の生存本能を支えているのは、生き抜いて、何が何でも客に復讐したいという怨みと執念だ。
そして客を殺した後は、自分を裏切った父親を八つ裂きにしてやりたいと愛人は心の底から思っている。
母を裏切り、自分を裏切った父を、母の眼の前で八つ裂きにしてやりたいという切望。
そんな悍ましい怨念が愛人のあくなき戦意を鼓舞し、刺激して止まない、そんな戦況が何時果てる事もなく続いている。