恋愛実践録154
暗がりの中、ゲリラ戦の様相を呈している今、とにかく背後を突かれた者が命を落とすのは自明の理だと、愛人は思った。
父親に首を絞められ殺される夢を見て、愛人は瞼を開いた。
心臓の動悸が高鳴り、涙ぐんで全身が小刻みに震えているままに、愛人はベッドに横たわったままそぞろ耳を澄ます。
暗がりの中、渡り廊下を歩く足音の軋み音が震えるように聞こえる。
侵入を防ぐべくカモフラージュの為に入口にバリケードを張った居間の方に向かって行く足音だ。
気付かれないように慎重な足取りで足音を忍ばせて歩いているのだが、古い寺の木製の渡り廊下は、体重をかけただけでも、どうしても軋み音を立てる。
その音に耳を澄ませながら、愛人は考える。
忍び込んで来た旦那と同じように渡り廊下を旦那を追跡して歩けば、旦那に気付かれてしまう。
それならば今いるこの部屋の、死角になる暗がりに潜んで、相手が来るのを待つ作戦を取るしかないと。
白兵戦ならば武器は刃物が一番役に立つ。
暗がりの中、ゲリラ戦の様相を呈している今、とにかく背後を突かれた者が命を落とすのは自明の理だ。
そう思い、音を立てないように愛人はベッドから降りて、忍び足で死角になる暗がりを探し始めた。




