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恋愛実践録152
愛人は憎悪と殺意しかない視線を、何処かで監視しているであろう客に向けるべく、窓の外に送り続けた。
石ころを沢山集めてから愛人は考える。
これで旦那が不意打ちを狙って来る事はまず無いだろうと。
襲撃して来るならば、下調べをして寝込みを狙って来る戦術しかないだろう。
こちらはひたすら防御態勢を整えて、旦那を迎え撃つしか手はない。
旦那は下調べをする為に間違いなく、離れからこの寺に万全を期して忍び込んで来る。
その時、逆に不意打ちをかますやり方が勝負時となるに違いないと愛人は寝不足に血走った眼を細めて読む。
不意を突けるかどうかが勝負の分かれ道となるだろう。
石ころをテーブルの上に無意味に並べながら、そう愛人は考えた。
そして愛人は憎悪と殺意しかない視線を、何処かで監視しているであろう客に向けるべく、窓の外に送り続けた。




