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恋愛実践録150
旦那が先手を打った。
相手が準備を整える前にと言う意味合いを含めて、先手必勝の倣いに準じて初めに仕掛けたのは旦那だった。
寺の境内を物色し、うろついていた愛人を目敏く見付け、バットとちり取りを振りかざし雄叫びを上げて、やみくもに走り出し襲い掛かった。
それに向けて愛人が咄嗟に石ころを拾い上げ投げつける。
愛人が投げた石ころは当たらないが、旦那が足を止め、立ち止まり、ちり取りで顔面を防御したのも構わず、愛人が素早く次の石ころを掴み投げつける。
その石ころが旦那の肩口に命中し、旦那が激痛に絶叫を上げた瞬間、旦那は部が悪いのを察知して踵を返し、背中を向けて逃げ出した。
その背中に向けて愛人が容赦なく石ころを投げつけ、その一発が肩甲骨の側面に当たり、旦那は再度と短く絶叫を上げ、思わず転倒しそうになったが、何とか体勢を立て直し、ほうほうの呈でその場から逃げ出して行った。
 




