恋愛実践録148
旦那が押し入れの中にあるバットを見付け、狂喜する。
居間の押し入れにあしらうように木製のバットがあるのを見付け、旦那は狂喜した。
剣道三倍段、打撃系の武器は刃物よりも遥かに強い。
ドアを破壊して、力任せに邪魔物を排除し、恐れおののく愛人に襲い掛かればそれで良いのだ。
このバットさえ手に入れば、別に寝込みを襲う必要もなく、愛人を見付け次第直ぐさま襲い掛かり、撲殺すればそれで事は足りる。
確かな勝算を我がものにして、ほくそ笑んだ後、逆に旦那はかぶりを激しく振り、油断大敵を肝に銘じ、戦略を紐解くように自問自答を繰り返す。
「こちらがバットをかざして、大上段に捩込んだ場面を愛人が想定していて、もし仮に愛人が石ころのような飛び道具を使って来た場合はどうするのだ?」
「何か盾になるものを守りとしてかざし、突っ込むしかあるまい」
「機動隊じゃあるまいしジェラルミンの盾があるわけもないし、そこまで用心する必要性は無いと思うが、どうだ?」
「いや、油断大敵だろう。相手が女だと油断したら、しっぺ返しを食らいこちらの命取りになってしまうぞ。相手は正に命懸けならば、油断は絶対に禁物だと思う」
「ならば頭部への投石を防御する為のちり取りがあれば良いではないか?」
「しかし、ちり取りでは弱すぎるのではないか?」
「贅沢は言ってはいられまい。備えあれば憂い無しだ」
「分かった」




