恋愛実践録142
「この条件は愛人にも伝えてありますが、簡単に言えば、二人で殺し合いをして、殺した者がこの牢獄から脱出出来るという条件です」と客が旦那に冷たく言い放った。
自問自答を繰り返していた旦那の本に、意外にも監視人を引き連れて客が姿を現した。
それに気がつき旦那が眼を剥き、反射的に土下座して、深々と頭を下げ、畳に額を押し付けて言った。
「すまない。やっぱりこんな俺を許してくれるのか。やはりお前は俺に惚れているのだな?」
客が旦那の言葉を無視して冷たい口調で言い放つ。
「残念ながら、私はそんな用事の為に来たのではありません。私はこれから行われるゲームを愉しみに来たのです」
旦那が土下座したまま客を見上げ尋ねる。
「ゲーム?」
客がポーカーフェースを崩さずに無機質な口調で告げる。
「貴方の大切な愛人をその手で殺して下さい。そうすれば貴方はこの寺から解放されますから。但しこれはゲームですから、それだけではゲームになりませんので、条件があります」
旦那が顔をしかめ尋ねる。
「条件とは何だ?」
客が血走った目付きをして答える。
「この条件は愛人にも伝えてありますが、簡単に言えば、二人で殺し合いをして、殺した者がこの牢獄から脱出出来るという条件です」
旦那が首を傾げ暫し黙考してから再度客を見上げて尋ねる。
「俺があの女を殺せば、俺は本当に解放してくれるのか?」
客が恭しく頷き答える。
「それがゲームのルールですから…」




