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恋愛実践録14
客がホスト亭主に復讐を依頼した。
沼の底に引きずり込むような強烈なる情交を交わした後、客が「今から一緒に旦那の愛人宅に行きましょう」と提案した。
ホスト亭主が訝り、その意図を「どうしてそんな事をするのですか?」と尋ねると、客が「とにかく付き合って下さい」と一方的に押し切り、二人はタクシーに同乗して愛人宅に向かった。
朝焼けが空を茜色に染めている街中でタクシーを降り、愛人宅マンションに対峙するように客が佇み、マンションの一室を睨みつけ指指し言った。
「あそこで旦那と愛人はいつも添い寝をしているのですが、わざわざ貴方をここに連れて来た理由は貴方に愛人への復讐を依頼したいのです」
ホスト亭主が眼を剥く。
「復讐、ですか?」
憎悪たぎる目付きをしたまま客が言う。
「そうです。お金はいくら掛かっても構いません。復讐して下さい」
うろたえつつ、ホスト亭主が尋ねる。
「どうやって復讐するのですか?」
マンションを睨み据えたまま客が答える。
「簡単です。貴方に惚れさた後、容赦なく棄てて下さい。よろしくお願いします…」