恋愛実践録114
「家族の事を思い遺すからこそ、俺は自殺して果てるのだ。違うか?」と元リーダーは自問自答を繰り返す。
自殺するにしても、その遺体から自分の身元が分かり、保険金が降り易くしなければならない。
その自殺方法の選定選別を元リーダーは腕を組み考える。
例えば電車への投身自殺は電鉄会社への賠償問題が発生して、保険金を丸ごと電鉄会社に徴収される可能性があるから、避けなければならないと、類推推測出来る。
それでは死ぬ意味が無いのだ。
降りて来る保険金は全て遺族に渡らなければ、死ぬ意味すらなくなってしまう。
入水自殺も遺体が見付からない可能性があり、避ける項目となるだろう。
ならばと元リーダーは考え続ける。
近場のビルから投身自殺を図るか、何処か公園の巨木にロープを垂らし、首を括るしかないが、どちらにするかをそぞろ迷い、再び元リーダーは自問自答を繰り返す。
「首を括るのはいいが、一思いに死ねないのではないのか?」
「そうだな。遺留品を遺して一思いに死ぬのならば、投身自殺が一番だろうな」
「俺はそう思うが、お前はこの世に思い遺す事は無いのか?」
「家族の事を思い遺すからこそ、俺は自殺して果てるのだ。違うか?」
「そうだな…」




