恋愛実践録101
内通者たるボディーガードの長は独り考える。
ボディーガードの長は独り考える。
言わば組織の中枢にいるであろうボディーガードの長という立場は、隠れみのにうってつけであり、愛人を欺く方便方法は、とにかくその忠誠を尽くす演技力にかかっていると。
責任を追及され自分の立場が窮地に立たされ、己の保身の為に内通者をがむしゃらにあぶり出す演技。
その演技を迫真にすればする程に、自分が内通者である事の真実から遠ざかる道理。
その演技力を細心の注意を以って行使しながら、集まって来る情報を保留、あるいはそのまま愛人に流せば良い道理。
愛人から叱責、激しく責任を追及される己の立場は、裏返せば最も嫌疑を受け難い立場だと言い切れる。
叱責されるその苛立ちや怒りを、配下の者を糾弾しあぶり出すその迫真の演技にぶつければ、逆に配下の者からも最も嫌疑を受け難い立場が形成される。
愛人の言わば愚直なる忠犬である立場は、そのまま内通者にとっては最良の隠れみの、立場と言えよう。
暴行リンチする迫真の演技力。保身の為に醜く喚き散らす演技力がそのまま最良の隠れみのになっているのならば、長は渾身の力を以って拳を振るい、大声で喚き散らす。
そして後は客との交信を一切絶ち、鉄則に従い絶対に口を割らない姿勢を貫けば良いと、そう長は考えた。




