表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終焉ペレストロイカ  作者: 如月ライト
第1章「始まりを告げる世界」
5/79

Daydream Baddream

少しの間デーモンを観察し分かったことがある。アイツらは人を探している。

ずっと「ハデス・グレイ様を探せ」と言っているのが聞こえてきたからである。

ハデス・グレイについてケントに尋ねると何でも10日ほど前から戦場に出てこなくなった暗黒騎士の名前らしい。

なんでそんなことを聞くのかとケントから聞かれたときは焦ったが…まぁ今はそんなことは関係ないか。

デーモンは3対いるが、うち1体は他の2体のデーモンと距離が開いていて孤立してしまっている。そいつからたたけば的確に倒せるだろうという結論にいたり、そのための陣をしき終えたところだ。

俺とケントはデーモンの真後ろに立ち、俺たちの後方、つまりデーモンがいない方向へ誘導し、クレスが仕掛けた罠にはめて、ナミの一撃をお見舞いする。

少しの間俺たち4人の間に緊張が走る、それを断ち切るようにケントが

「いくぞっ!」

と、合図を出す。 そして俺とケントはデーモンに突撃した。


「ほらっ!こっちこいよ!」

ケントがそう挑発し、俺はデーモンの気を他の場所に逸らさないためにもじわじわと攻撃を入れていく。

「もうすぐポイントにつく、早くいくぞ!」

そう言いケントは全力で走る。 俺もそれについていくように走った。

デーモンはしっかりと後をついてくる、ほかのデーモンに感づかれてもいない。

「よし!今だ、発動させろ!」

俺がそう合図しクレスが魔方陣を発動させ、デーモンを拘束する。

デーモンは驚き魔方陣を解除しようと足掻く、しかしすぐさまナミが巨大なハンマーを使いデーモンの頭をかち割る。

「うえ、デーモンの膿汁付いちゃったよ…気持ち悪いなぁ、もう!」

ナミはそう言いもう一度デーモンの頭を叩く。デーモンは頭部を激しく損壊し死亡した。

「案外あっけなかったな、俺たちのチームワークの完全勝利だな!」

ケントはそう言い仲間たちを見渡した。 仲間たちは喜びに満ちた顔をしているがすぐに表情を引き締め残りのデーモンをにらんだ。

「なぁ、キョウヤ。あいつらもこの方法で倒すんだよな?」

「あぁ、そうだな。クレスとナミには負担をかけるかもしれないがこの方法でいく。いけるか?」

俺は二人を見た。二人は無言のままうなずく。

「よしっ!休んでる暇はないぞ、さぁ突撃だ!」

そのケントの言葉とともにおれたちは配置についた。


「なぁ、本当に2体同時なんていけるのか?」

と、俺はケントに尋ねた。ケントは強気な態度でこう答えた。

「オレたちなら必ずできる、少し不安でもこう思ってれば絶対成功するさ! よし、いくぞ!」

俺とケントは二手に分かれてデーモンに攻撃を入れる。

俺がまず右側のデーモンを引き付けて、その後ろからケントが残りの1体を連れてくるという戦略だ。

「おら!こっちに来いよ!」

俺は勢いよく持っていた剣を振りかざしてデーモンに一撃を入れる。そしてタイミングを見計らって後ろに飛び退きそのまま仕掛けまで走る。

デーモンが隙を見せる度に少しずつ攻撃を入れていき仕掛けの場所まであと少しというところで俺は勢いよく走った。

デーモンも速度を増した俺を追いかけるようについてくる。

「今だ!捕えろ!」

俺が合図を出したが、クレスのタイミングが遅れ魔方陣に上手くデーモンがかからなかった。 クレスはその時緊張のせいで魔方陣を起動させるタイミングを誤ったのである。

「もう1体のデーモンを仕留めるときに使った魔方陣を使え!」

俺がそう言い、クレスははっとした表情になる。 クレスは真剣な面持ちになり腕を振り上げ魔方陣を展開させた。

タイミングが合いデーモンが魔方陣に拘束される。 その瞬間木の上からナミが大きなハンマーを振りかざしながら下りてくる。

デーモンまであと少しというところで、デーモンが所持していた巨大な剣を振ると、いともたやすく魔方陣が消滅した。

そしてナミの攻撃をデーモンはその剣で受け止める。そしてナミを弾き飛ばした。

「なっ…!?そんな…」

ナミはそう言い空中で態勢を立て直そうとした。しかしケントが引き連れていたデーモンがその先にいたのを彼女はすっかり忘れてしまっていた。

「ナミ!」

ケントがそう叫びナミを助けにかかる。ナミはデーモンの手前で間一髪ケントに助けられる。

「ヤバいな…」

俺はそうつぶやき、今の状況を整理した。

俺とクレス、ケントとナミの2手に上手く分断されてしまったこの状態では到底勝ち目などないことはわかっていた。

しかしケントは

「お前ら、あきらめるな!これを逆転させてこそ真の兵士だ!」

と、言った。俺は何をバカなこと言ってるんだと思ったが、他の奴らは明らかにこの安い挑発に乗ってしまっていた。


「くらえ、俺の魔法を!」

そう言いクレスは数々の魔法をデーモンに撃つ、しかしデーモンの剣によりあっけなく切られてしまう。

恐怖に顔をひきつらせたクレスにデーモンが近づき、とどめを入れようとした。

「お前の相手はこっちだ!」

そう言い俺はデーモンの腕を切り落とした。俺のどこにそんな力があったかわからないがこの場合は感謝しなくちゃな。

デーモンは腕を落とした俺に標的を変え迫ってくる。俺は軽やかな身のこなしでデーモンの攻撃を避けるがそう長くは続かなかった。

少しバランスを崩した俺の所にデーモンの一撃が振り下ろされた。それを俺は剣で防ぐも抵抗虚しく剣は俺の手を離れてしまう。

もう一度デーモンが剣を振り下ろす。

俺はヤバいと思い、反射的に何もない虚空に手を伸ばし、それを横に振るった!

鈍い音と共にデーモンの持っていた剣が俺の横に落ちてきて刺さる。

何が起こったのかと目を開けると俺の手にはさっきまである筈のない、俺の物とは別の剣が握られていて、それを使いデーモンの手首を切断していたのだ。

「これは、なんなんだ…?」

そう考えていると突然地面が光り出した。 何事かと顔を上げるとクレスが魔方陣を設置していた。

「キョウヤ、今がチャンスだ!早くとどめを…!」

「オーケー、わかった!」

俺は魔方陣で捕らわれたデーモンに飛びかかった。しかし俺の攻撃が当たる直前デーモンは足を使い俺を蹴り飛ばした。

俺は木に打ち付けられてしばらく動けない状態に陥ってしまった。

デーモンが何か呪文のようなものを口にしたと思うといきなりクレスの足元に魔方陣が浮かび上がる。

俺はヤバいと思いクレスに危険を伝えようとしたが声が出ない。いや、正確に言えば声は出るがかすれて聞こえないといった方がいいのか。

俺が必至で声を絞り出そうとしている間にデーモンは魔方陣を完成させた。もう止めることなどできない。

「やめろぉ――!」

俺が声を絞り出したがデーモンはそれで止まる筈はなく魔方陣から炎の柱を吹き上がらせた。

その炎の中クレスは苦痛に満ちた顔を浮かべ燃え死んだ。あいつは最後まで必死に戦っていた、逃げずに…。


「くそっ!ふざけるなよ、何で攻撃が通らないんだ!?」

ケントとナミは二人がかりでデーモンに攻撃を加えたが攻撃が通らない。

ナミがスタミナ切れを起こしてその場に倒れ込んだ。そりゃこれだけ攻撃してれば倒れるよなと、ケントは思いナミを助けに入ろうとする。

しかしデーモンがそれより早くナミに攻撃を加えた。

ナミは寸での所でハンマーを使い攻撃を弾いたがその衝撃でハンマーが崩れ落ちてしまう。

ナミはその場にへたり込んでしまう。もはや絶体絶命だ。

ケントはそれを助けるべくデーモンの背後を付きいっきに刀身を突き刺す。

ぐちょり…と嫌な音が響いた。ケントはデーモンに攻撃が通ったと確信した。

しかしそれは違った。ケントは顔を上げ、その顔を恐怖と悲痛にゆがませた。

デーモンだと思って攻撃したのはナミであった。デーモンはケントの攻撃が入る直前にナミを盾として使ったのである。

「護ってくれるって言ったのに…」

ナミは怒りにも悲しみにもとれる表情のまま息を引き取った。

「あぁ…あぁ…」

ケントは呻くことしかできなかった。そして完全に戦意を失ったケントはもう立つことが出来なくなっていた。

デーモンはケントを殴り飛ばした。

戦意喪失したケントはそれを防ぐ術もなく吹き飛んだ。


ただ仲間たちが殺されていく様を見つめることしかできなかった俺はその瞬間己の弱さに気付いた。

自分たちは弱いのにそれを認めずに敵と対峙し、無様に殺された。

あぁ、俺が止めればよかったのかな…。

俺の中で様々な感情が渦巻く、そしてかつての仲間たちを見つめた。

クレスはもはやアイツの原形をとどめていなかった。

ナミはケントを恨みながら死んだんだろうか?あいつの表情だけじゃわからないか。ひどい死に顔をさらしている。

ケントは外傷は少ないな。あいつ何うつむいたまま倒れてるんだよ、それじゃお前の顔を最後に拝めないじゃないか。

俺は仲間たちの散り様を見て自分もああいう風になるのかと覚悟を決めた。

「いや、俺には帰らなくちゃならないところがある…!」

ユキ…。

俺はつい最近出会った少女の名を思い浮かべた。あの子を泣かせてはならない、あの子がいるところに必ず生きて帰るんだ!

そしてさまざまな感情がダムが決壊したようにあふれた。

それと同時にその感情たちとともに俺の体の底から出てきた何かに浸食された…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ