2-5 ブローチ探し
「・・・・・・それで仕事サボってブローチ探してたわけ?あんた、バカじゃないの?」
「バカは余計だ、バカは」
「むしろバカしか要らないわよ」
なんやかんやで新人メイドのエリーのブローチ探しにメイドBが加わった。
「誰がBよ。ひねりつぶすわよ」
「誰も何も言っていませんが・・・・・・」
「心の声が聞こえたのよ」
「僕は何も言ってないぞ!心の中でも!」
「わかったわよ。ひねりつぶすのは無しね」
「そ、そう。わかってくれてよかった」
「替わりに握りつぶすわ」
「何一つとして変わっていない!」
などと騒ぎつつ、三人は三階の廊下を一通り探し終えた。
「とりあえず三階は終わったけど・・・・・・」
「まだ一階も二階も残ってますぅ・・・・・・」
「そもそもどうして三階から探してるの?」
「姫様の部屋が三階にあるからね」
「姫様の部屋を出たところから探し始めたんです」
「ああ、そういうこと」
納得した様子のベロニカ(メイドB)だったが表情はうんざりしたものだった。
「正直このまま一階、二階を探すのは腰が引けるわ。落とし物の管理とかしてる人いなかったっけ?」
「いましたっけ?」
「いるみたいですよ」
新人メイドの発言に先輩二人が一瞬思考停止に陥った。しばらくして少年執事が尋ねる。
「エリー、どうしてそんなこと知ってるの・・・・・・?」
「マニュアルに書いてありますよ」
「・・・・・・。あったわねえ、そんなの」
二人はエリーが差し出した『おしごと大全~第四巻~』を懐かしそうな目で見つめた。驚異的な分厚さと圧倒的な文章量で読む者を瞬く間に眠りへと誘うその本は全十二巻セットでこの城に住む臣下の必読書となっている。ちなみに二人は一巻すら読み切っていない。
「第四巻に落とし物管理の項がありますよ」
「そ、そう、だったわね。ど、ど忘れしてたわ。ほ、ほほほほほ・・・・・・」
「あ、あっれー、おかしいなあ、昨日までは覚えてたのになあー、あは、あはははは・・・・・・」
「四階にあるみたいですね!」
「そう!四階よ!さっさと行きましょう!」
「そうだな!」
すでに新人に先を越された気がして内心ひどく落ち込む少年執事とメイドBであった。
忙しいから腕があと五本くらい欲しい。