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2-4

†††2-4



家臣が帰ってしまった後で姫様が執事に話しかける。姫様の持つグラスの中で氷がからんと音を立て、姫様を日光から守るパラソルが風に揺れる。


「あんた、本題に触れてないわよね」

「え?」

「え、じゃないわよ」


言われて執事は本題本題、と考え始めた。そして新人メイドエリーの顔を見るや、素っ頓狂な叫び声をあげた。


「エリーが失くしたブローチ、あんた一人で探しなさいよね」


姫様は残った紅茶をずずっと飲み干すと立ち上がり、日陰から出てまぶしそうに目を細めた。


「暑い!パラソル!」

「はいいっ!」


落ち込む間もなく執事はパラソルを引っこ抜くとお嬢様を日差しから守るために走っていった。



***



「ううう、申し訳ない。すっかり忘れてた」

「いいんですよ、こうして探してくれてすごく嬉しいです」


耳慣れない感謝の言葉に少年執事は思わず感極まってしまう。


「ど、どうして泣いてるんですか!?」

「ごめん、この城の中にはそんなこと言ってくれる人いなかったから」



・・・・・・執事と新人メイドのエリーは彼女が失くしたというブローチを探して城の中を歩き回っていた。


話は少し(前々々回)にさかのぼる。廊下で泣いていた少女エリーは実はこの城に来た新人メイドさんであった。案内メイド(たぶんアリエル・A)はふらっとどこかに消え(どうせ皮下脂肪でも増やしていたのだろう)、あてどなく城をさまよった挙げ句、両親から奉公に行く娘に渡されたブローチを失くす始末。

不運には違いないが、そもそもこの城への勤務が決まった時点で既に彼女は不運だと言えよう。


「・・・・・・まあ、がんばるしかないさ」

「はあ・・・・・・」


先輩のこの上もなく実感のこもった言葉に新人はあいまいに相づちを打つ。彼女はどうやら常識人のようなので、三日もすれば先輩と同じ死んだ目ができるようになるだろう。いや、二日か。


「ところで城に来てからどこを通ったのかな。それがわかれば探しやすいんだけど」

「わたし方向音痴なもので・・・・・・」

「まあ、仕方ないか。この城、ただでさえ無駄に複雑だからなあ。無駄に」


そのとき、メイドのBと出くわした。


「誰がBよっ!」

「まだ何も言ってないよ」

「言われた気がしたのよ。・・・・・・ところでアンタ何してんの。仕事は?」

「すっぽかしてきました」

「すっぽかしてたんですか!?」

「新人の前で何言ってんのよ、アンタはっ!」


ベロニカは(突如出現した)ハリセンで執事をぶっ飛ばした。


「ふっ・・・・・・。仕事とは・・・・・・サボるためにあるッ!!!」

「ないわよっ!」

‥‥‥ベロニカの制裁はその後、五分間続きました。



†††

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