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「あー・・・・・・。えーっと、どうしようかな。今のが我らがメイドのA、B、Cです。Dはいません。飛んでEが加わります」
執事はヒースの逃亡でしいん・・・・・・、とした場の雰囲気の中無理矢理進行を進める。
再び静寂に包まれかけた時、執事はゆっくりと指を上げ、
「本当の自己紹介をお願いします!!A,B,C!!」
と彼女たちを順に指さした。
そして執事にA,B,Cと指をさされたメイド達は、いきなりポーズを取った。期待に目を輝かせるその他の家臣と何が起こっているのか全く理解できていない新入りメイド、エリーが対照的な光景だった。
「誰もが一目おいてるメイドの長!アリエル・A!」
「誰が呼んだか暴言メイド!いつか返上、目指してる!ベロニカ・B!」
「誰であろうと私は味方!天使の微笑みばらまくわ!クリスん・C!」
ばーん!と三人は各々のABC文字のポーズをとって、締めくくった。
「・・・・・・はい、ありがとうございました。続きまして、」
「拾えよ!!!!!」
Bがポーズを解いて、メイド帽を地面に叩きつけながら叫んだ。ちなみにメイド帽を脱いだ件で、メイドAに後でこってりしぼられることになります。
「しばらくしたら考えますよ、メイドB」
「今やらないと意味がねえだろうがよ!」
そこでC文字がB文字をなだめに入った。
「まあまあ、落ち着いてベロニカ」
「クリス、あんたこそ落ち着いてないで・・・・・・、ってあんたすごいわね、その格好。ずっとそのままでいたの!?」
クリス、いや、クリスん・CはC文字担当である。
「ばかなッ」
「あの体勢を長時間維持するだと!?」
「奴は化け物か!?」
家臣たちが口々に彼女を評しても、C文字は微動だにせず、B文字の言葉に応えた。
「ふ・・・・・・、この程度メイドの心を持つ者なら何時間でも可能よ」
「いやそれはアンタにしかできない」
「えへへ、ありがと」
「褒めてないからね!?」
メイドBとCのやりとりの後で執事はパンパンと手を叩いて家臣を注目させた。
「・・・・・・はーい、というわけです。これでメイドの紹介は終わりです。他の家臣達にも自己紹介させようと思ってましたが時間の都合もありますので、これでお開きにしましょう」
「なにい!?あたし達だけにこんなことさせてお開きだあ!?てめえ、執事!時間の都合ってなんだ!言ってみろ!」
執事のやる気のない発言にBが抗議の声を上げた。
「えーとそうですね・・・・・・」
「考えてんじゃねえよ!」
「・・・・・・感じろと?」
「お前なんか燃え尽きてしまえ!」
しかし、そんなB文字の肩にぽん、と手が置かれる。
それは共に戦場を駆けたAとCであった。
「もういいのよ、もう・・・・・・」
「ベロニカ、もうやめて・・・・・・」
「メイド長、クリス・・・・・・」
B文字は感動の涙を・・・・・・流さなかった。
「なんでポーズ解いてるのよ!」
「だってしんどいじゃない♪」
と一番楽なポーズだったはずのアリエル・A。
「Cには飽きたわ。Bと交代しましょう」
「頭文字だからできねえよ!」
あーだこーだと言い争うメイド達を尻目に家臣は続々と帰っていき、後に残ったのはメイドABC+Eだけだったとさ。
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