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……分かる人には分かるタイトルネタ(笑)

「とりあえず何が要るかなぁ……まず食料の類かね」

『発電機はあっても冷蔵庫はありませんから、必要なのは日持ちのする乾物類、穀物類、根菜類でしょうか。あと水、回復ポーション類等が必要と思われます』


 俺は商店街の目抜き通りを歩きながら、必要な物資についてイスズと小声で相談していた。


「水は……あんまり買っても腐らないか? あんまり衛生状態良くなさそうだし……それに、そんなに一度に持って帰れないぞ」

『飲料水としては私が『水の浄化』ピュリファイウォーターの術を使えますから、買いだめしておいても平気です……あと、あるじさまの背負い袋(ザック)には空間拡張を施してございますので、見た目の50倍は入ります。重さも50分の1になっておりますし』

「えっ……それってイングリット達が言ってた……圧縮なんとか袋……」

『はい、圧縮保存袋、ですね。それと同様の物にしてあります』

「いや、してありますって……」

『正直、空間属性の術は得手ではないので、50倍がせいぜいで申し訳ないのですが……その代わり私の本体トラックの貨物室も同様に50倍の空間を構築してあります』


 ちょっと待て。

 貨物室の空間を50倍?

 ……2トン車の50倍だから……貨物100トン積めるって事か……?

 もうそれ貨物列車とかタンカー並みだよね!?

 むしろ貨物室内に住めるし! 豪邸建てられるし!


「そ、そんな事が出来て……「苦手」なんだ……?」

『はい。効果範囲自体は魔力をつぎ込めば良いだけなので貨物室全部でも問題ないのですが……効果倍率は属性適正が大きくかかわりますので……申し訳ありません!』


 画面の中で土下座をするイスズ。


「いや、待てって、咎めているんじゃないよ。むしろ逆……貨物室丸ごとそんな事して大丈夫なのか? イスズの体に悪影響とか出ないのか?」

『あるじさま…………なんてお優しい……大丈夫です、この手の魔術は一度固定してしまえば、自然に存在する魔力を糧に安定するので』


 画面の中では両手を組んで潤んだ目で俺を見上げるイスズが。

 ……しかし、いくら俺のトラックと同化したからって、ここまで無条件に好意を向けるものなのか?


「そ、それならいいんだが……っと、すみません!」


 ボスッと、いきなり俺の額に感じる軽い衝撃。

 どうやらザックの中のイスズと話すのに気を取られて、人にぶつかってしまったようだ。

 ぶつかった相手をよく見ると、ガタイの良い、革の鎧を着た茶髪の角刈りの男性で……ちょうどさっき入った冒険者協会ギルドに居たようなタイプの人だ。

 ……つまり悪人面の強面だ。

 …………よそ見はいけないな。うん。誠心誠意謝ろう。


「……や、本当にすみません。つい考え事をしていて……」

「お前莫迦か?」

「は?」

「あんな金持ったまま、こんな路地裏に来るとか……まあ、こっちとしては好都合だけどな」


 角刈り男に言われて周りを見渡すと、確かにさっきまでの喧噪が嘘みたいに人が居ない。

 どうやらうっかりメインストリートを外れてしまったようだ。

 ……というか「好都合」ってなんだ。もしかしてこいつ……


「勉強代だと思って、さっきの金……全部置いていけや……あと、お前ぇのタマもな!」


 やっぱり強盗か! やばっ……

 俺は反射的に逃げようとしてきびすを返した。


  ドスッ……


 俺の脇腹に、短刀が突き入れられたのはその時だった。

 その短刀を振るったのは角刈り男ではない。

 いつの間にか俺の後ろに居て、退路を断っていたやせぎすの男の仕業だった。


「っ……くそっ……仲間、居たのかよっ……畜生、刺された……刺され……あれ?」


 痛く、ない。

 どうなっている?

 よく見ると刺されたと思った脇腹からは一滴の血も出ていない。

 出がけに着てきた防寒作業着も無事だ。

 刺された、と思ったのは勘違いだったのかとも思ったが、俺を刺したと覚しき短刀を持ったやせぎすの男も目を白黒させている。


「ち、ジョルト、てめえ……後ろから人を刺すなんて簡単な仕事も出来ねぇのかよ?」

「い、いや違うんだボーゲン、確かに……このっ、てめぇっ!」


 ジョルト、と呼ばれたやせぎすの男は手にした短刀を焦ったように無茶苦茶に振り回し始める。


「ちょ、危ねぇな! おい!」

「な、なんで……当たんねぇ!?」


 なぜかジョルトの短刀は俺の体を刺すことは出来ないようだ。

 よく見ると体の表面で刃が弾き返されているように見える。


「な、なんだか分からんが……好機、か?」


 俺はこれでも中学高校と部活は柔道をしていた。

 まあ、せいぜい市大会優勝レベルだが……一応講道館2段を持っている。

 テンパっている素人を投げるくらい簡単なことだ。

 短刀を握っている右手を俺の右手で押さえ、半身を入れると同時に左腕の外側を相手の胸に着け強く押す。

 それと同時に左足で相手の両膝の裏を刈る。

 いわゆる変形の「谷落とし」だ。

 これは下手に掛けると頭から落としてしまう危険な技なのだが、今回は自業自得だから思いっきり固い地面に叩き付ける。


「へぐぅ!!」


 案の定ジョルトは思いっきり頭を強打したらしく、後頭部を押さえて悶絶している。

 その間に短刀を奪って遠くへぽいっと。


「は、ジョルト、情けねぇな? 相手は冒険者ですらねえだろうによ?」

「まあ、役にたたねえやつには分け前をやらなきゃいいさ……だろう?」

「へっ、違いねぇ」


 ジョルトを倒して後は角刈り男――ボーゲン1人だと思ったら、物陰から更に2人の男が出て来た。

 おいおい……マジかよ。

 今度は全員、短刀なんて可愛い獲物じゃなくて……鈍色に光る短剣ショートソードを構えている。


「おい、てめぇら……こいつ、近寄ると妙な技を使うぞ……近寄らないで一気に斬り殺せ!」

「「おう!」」


 ボーゲンの指示に剣を構えて突っ込んでくる2人の男。

 今度こそ死んだか――――!?


 バチッ! バツン!!


「ぴぎゃ!??!!」

「ぱぴぷっ……ぺぽーーーーっ!?」


 ……あれ?

 いつまでも来ない痛みに、思わずつむってしまった目をそーっと開く。

 すると、剣を振り上げて迫ってきていたはずの2人の男が全身を痙攣させてひっくり返っている。


「あ、あれ……?」

「て、てめえ……今度は何をしやがった!!」


 何が起こったのか分からず呆然としている俺と、頭から湯気を出して怒り狂っているボーゲン。

 一体全体どうなってんだ……?


『あるじさま』

「イスズ……今のはもしかしてお前が?」

『はい、軽い雷撃魔法を相手の剣に流し入れました』

「じゃあ刃が通らなかったのも」

『いえ、それはあるじさまのその服のせいです』

「………え?……いやいや、……普通の防寒作業着よ?」

『そうですね。あるじさまの世界では普通の……防寒用に裏地にアルミ(・・・・・・)を蒸着した(・・・・・)服ですね』

「……って、これの裏地もルミニウム真銀ってことか!?」

『そうです。ルミニウム真銀は強い物理衝撃に対して瞬間的に力場を形成して弾き返す性質と、魔力を貯め込む性質の二つを併せ持ちます……武具の素材としてこれ以上の物は無く、さらに精製するのが難しいこともあって、素材としては破格の値が付くのです』


 ……作業着ってチート装備だったのか……


「てっめぇ……俺を無視して1人で……何ぶつくさ言ってやがる!」


 しびれを切らしたのか、剣を振り上げ突っ込んでくるボーゲン。


「危なっ……!」


 思わず素手で剣を押しやろうとしてしまう。

 しまった。服ならルミニウム真銀のオートバリアが発動したのに!

 思わず手に走る激痛を予想して顔をしかめるが、剣は俺の掌を切り裂くこと無く弾かれる。

 どうやらオートバリアのカバー範囲は存外に広いらしい。


『今です! あるじさま、手を押し当てて!』

「お、おう! こうか!?」


 イスズの指示に従い、右手をボーゲンの胸元に押し当てる。

 すると――バチン! という音と共に俺の右手は閃光を発し、ボーゲンをその場に昏倒させたのだった。


          ※


「すみませんっ! お客様……ご迷惑をお掛けしましたっ!」


 目の前にはギルドの応接室で平身低頭しているお姉さん。

 縄でぐるぐる巻にされた例の強盗未遂4人がつながれたロープを片手に持ちながら、床に着く勢いでぺこぺこと頭を下げている。

 あの後、俺がこの4人を前にどうしようかと悩んでいたところ、俺を探しに来た受付のお姉さんとばったり出会い、あっという間に4人を縛り上げギルドに連行していったのだ。

 なんでも迂闊にお客の身の安全にかかわる個人情報を漏らしたことをギルドマスターにこっぴどく怒られ、半べそをかきながら俺を探していたんだそうだ。


「それにしても冒険者の風上にも置けない奴らですっ! キッチリお仕置き(・・・・)した上で除名処分にしておきますので!」

「「「「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!」」」」


 なぜか受付のお姉さんのひと睨みで真っ青になって震え上がる4人。

 ……このお姉さん、案外と強いんだろうか。


「それにしてもお客様お強いんですね! 4人相手に素手で勝っちゃうなんて!」

「いや、それほどでも……」

「そんなにお強いのに冒険者にならないんですか? 冒険者は良いですよ~スリル! 浪漫! 一攫千金!!」

「う、うん。そうかもね」

「先ほど持ち込まれた硬貨の価値を見てもお客様は冒険者になるべきです! むしろそれ以外あり得ません! いずれ冒険者オブ冒険者と呼ばれることになるのは火を見るより明らか!」

「い、いや、あのね? 俺は労働者の巣(ワーカーズネスト)にね?……」

「大丈夫です! 両方に登録しても問題有りません! ですから冒険者になりましょう! 今手続きしちゃいますから! さっさかさーのさっと……はい、これに指を当てて……はい、OKでーす」

「あ、あれ……?」

「ようこそニナロウの街の冒険者協会ギルドへ! 新しい仲間を私達職員一同は歓迎します!!」


 こうして、俺は冒険者協会ギルド労働者の巣(ワーカーズネスト)を兼業することになったのだった。

 ……どうしてこうなった。








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