振り向いて欲しい。
好きな人に好きな人がいるっていう経験ありますよね?
『好きになったらしょうがないよ。』
「変質者はっけーん。」
電柱の陰に隠れてしゃがんでいる奴に、私は声を掛けた。
「あ!すいません!!……ってお前かよ〜。」
彼はかなりビックリした様子で振り返った。
「まぢで110番されるかと思ったし…」
「何してんのよ…(なら変なことするな)」
「わかんだろ〜!!ま・ち・ぶ・せ☆」キラリ
「はぁ?」
「だから静かにして!!」
『たとえどんな人にでも……』
「変なコトして振られないでね…」
彼は立ち上がってこっちを見た。
「何?心配してくれちゃってるの?」
「別に…そーいうわけじゃ…」
「大丈夫だって!まだ告白もしてないのにふられねぇよ。」
「純……」
「?」
あるんだよ…想いを伝える前から
行き場を失ってしまう
私の恋心のように切ない想いも………
「頑張ってね」
それしか言えなかった。
純が私の背中に不思議な視線を送っているのが分かった。
「おはよー」
彼女は小倉翠。小学校からの親友。
「あぁ翠。おはよぉ〜」
朝から私はかなりテンションが低い。
「何したの?何かあった?」
心配してくれる言葉が胸に響く。
「ん〜ん。眠いだけ。」
ゴメンね。本当のこと言えなくて。
「まどかいっつも眠そうだもんね〜」
また1日が始まる。
今日も私の想いは大きくなっていくだろう。
【2−3】
「ぁ。純。朝どうだった?会えた?」
少し暗い表情の純に声を掛けた。
「あ〜…多田か……いや〜…会えたよ?」
「なら良かったじゃん。」
ちくり。
「でもさぁ〜…やっぱあっちにとって俺は友達なんだなぁ〜って思って…」
自己嫌悪。と彼は苦笑いした。
「しょうがないょ。それは。一緒に登校出来ただけ良かったじゃん。」
ちくり。
「待ち伏せまでしたしな。」
ふっと彼は笑う。
「純ーー!!前田呼んでるー!」
純はびくっとした。
「速水〜お前さっき生徒手帳落としただろー」
前田章史がドアの前に来ていた。
「あ!!あぁ!!」
純の頬は少し赤くなっていた。
「ほら。気づけよな。」
「あ…ありがとう。」
彼は下を向いてかなり恥ずかしそう。
どうしてなんだろう。
なんで純は彼を好きになったんだろう。
「じゃぁな。」
「あぁ…じゃぁ…」
あんたの恋だって、叶わない率90%過ぎてるけど
かなり切ないし苦しいと思うけど…
でも…
長い間積み重なった私の想いは、
ちょっとやそっとじゃ消えてくれそうにないの……
「好きだなあ……」ぼそ…
振り向いて欲しいよ。
「何処が良いの?」
ニコニコしながら席に戻る純に私は聞いた。
「え?なにが?」
さっきの顔とはうってかわっている。
恋の力は偉大だ。
私の力ではあんたに何もすることが出来ないのに、
彼の行動で、あんたは浮きも沈みもする。
「だから、章史の何処が良いの?」
「え〜〜…」
照れるなよ。まぁ照れるだろうけど。
「だって性格良いし、一緒にいて楽しいし…」
ちくり。
「そんなの女でもいるんじゃなぃの?」
ちょっとひどい言い方かも。
「なんだょ〜〜。あいつじゃないと俺ダメなの。」
ちくりちくり。
じゃぁさ、あんたじゃないとダメな私は
どうしたらいいのょ…
なんて思っていても届くはずはない。
「そっか…」
最近毎日こんな感じで過ごしてると思う。
泣きたくなるよ。
「どうした?」
優しくしないで。
「何でもない。」
こっち見ないで。
私なんか一緒にいても楽しくないんでしょ?
「何でもなくないだろ?」
「何でもないってば!!!!」
やばい!!つい怒鳴ってしまった。
「なんだょ…。もういい。」
ガタン
ごめん…純。
次の日
私の前で、純と章史が笑いながら登校していた。
「美貴?」
「え!?何?」
帰り道で、翠と話してるのに上の空になっていた。
「最近変だよ?私には相談できない?」
「ちが……ちがぅ……」
いつの間にか私の目からは涙が出ていた。
「美貴。純のこと好きなんでしょ?」
「なんで……ごめん。」
「言わなくても分かるよ。私達小学から一緒だもん。」
「……でも……。」
涙で言葉が出てこなかった。
「『純には好きな人がいる』……?」
翠にはなんでもお見通しだった。
隠す必要なんてなかったのに。
「純のこと、中学から好きなんだよね。」
どうしてわかってるんだろう…
言わなかった私は最低だ…
ごめんね翠…。
「伝えた方が良いよ。思い切り」
「え?」
「砕け散ったら私が美貴を拾ってあげるから。」
「みどり…」
「行ってきな。」
私はいつのまにか走っていた。
ピンポーン……
がちゃ…
「はぃ。」
「純。」
「多田?」
「あのね、私純に…」
「俺さ……振られた。」
え……?
「さっき前田に告ったんだ。」
「なんで…」
「小倉に多田のこと聞いて…」
「何を?」
「多田が好きな奴に想いを伝えられなくて悩んでるって。」
それで…?
「だから…俺がうじうじしてられないと思って。」
馬鹿じゃないの?
私のために告白したの?
振られるために?
「前田にも好きな奴いるんだって!」
彼は満面の笑みだった。
「私を勇気づけさせるために?」
「お前もさ、伝えた方が良いよ。」
そんなあんたが好きなんだ。
「多田が良い奴だってことくらい、俺知ってるから。」
あんたのお人好しには負けるよ。
「前田優しかったし。悔いもないし。スッキリしたー」
好き。大好き。
「純…私、純が好きだよ。」
「はは。」
純は笑った。私も笑った。
明日の私は、今までより少し変わっているだろう。
まだまだ勉強不足です……




