2日目 ポンコツ・オンパレード
あらすじを先にお読みいただけるとわかりやすいかもしれません!
こいつらポンコツだ。
ひょんなことから公爵令嬢になってしまって、まだ2日。だがマーヤはすでに周囲の人物の評価を決定していた。
王子はポンコツだ。義姉もポンコツだ。両親もポンコツだし、国王夫妻もポンコツだ。
具体的に言うと、王子は五歳児。御年21にもかかわらず、泣き虫だ。することなすことが子ども。年甲斐もなく悪戯をしたりする。しかも割にポテンシャルが高いせいで、やらかすことの被害規模が尋常でない。
義姉は野生児だ。見張っていないと「パンがないなら雑草を食べればいいわ!」などと公衆の面前でのたまう。そして本当に本人が食べる。木登りぐらいなら可愛いが、義姉の野生児精神はそんなに柔じゃない。川を泳いで魚を取り、お手製の槍で動物を狩る。もはや原始人だ。笑えない。
そんな義姉を両親は溺愛している。彼女の義母つまり私の母にあたる人物も、義姉のよくわからない諭しに絆されて以来、日々イエスマンの鑑である。父も義姉のワイルドなところが可愛くてたまらないらしい。彼らがしているのは許容ではない。助長だ。
では両親単体ならどうかと言うと、父は自称天才発明家、母はもはや才能を感じるほどの守銭奴だ。これ以上は何も言うまい。
国王夫妻は彼らに比べればだいぶマシだ。国王は全人類を愛する愛の人。王妃はおっとりと天然とナマケモノを足して混ぜこぜにしてそれを十倍強烈にしたような人物だ。
本当に笑えない。笑えないけど笑うしかない。
目の前では王子が義姉に片膝をついて何かを差し出している。
「ミレイユ、見てくれ。道端の花が綺麗だったから君のために摘んできた」
王子が義姉に差し出したのは泥だらけのブーケ。いや、ブーケというにはお粗末だ。草ばかりでどちらかというとヤギの餌と形容した方がいい代物である。
「まあイアサント。美味しそうね」
しかし義姉は臆することもなくブーケに手を伸ばし、葉を一枚ちぎって口に入れた。
それを見たイアサント王子は。
「うわぁぁぁぁぁぁああああんミレイユのバカぁぁぁぁぁああああああああああ」
泣いた。声変わりもとっくに終えた男性が泣き喚くのにはなかなか迫力がある。しかし、義姉は食べられる葉の選別に夢中でまるで気に留めない。
「あははははは…はははははははは」
混沌の大広間に私の乾いた笑い声が響く。そもそもマーヤは2日前までしがないパン屋の美人な看板娘に過ぎなかったのだ。コレは完全に私のキャパを超えている。
私が笑っても誰も気に留めない。誰かが笑っても喚いても、その程度のことに構っていたらことが進まないせいだろう。
2日前、私はベルナデット公爵令嬢と街中でぶつかって中身が入れ替わってしまった。奇妙に聞こえるだろうがそうとしか説明がつかないのである。
そして、入れ替わったまま私はベルナデット公爵令嬢として生活している。入れ替わる前のベルナデット侯爵令嬢の記憶はなぜかある。屋敷の中のトイレの場所も、自室の部屋の場所も、これまでに教わった教養もしっかり知っている。だから成りすましはそれほど難くないのであるが…
「心の方が先に壊れそうなんだが」
ぼそっと呟く。正直言ってこの国の未来が心配だ。とてもとても心配だ。こんな人たちが自分の国の顔だとは、生まれてこの方知らなかった。
そして何よりもの問題は、この体の持ち主ベルナデットが、義姉の婚約者である王子との結婚を望んでいることである。そして聞くに堪えない話だが、それを私にやれと言ってきた。
100歩譲って、義姉ミレイユは少しおかしいけれど善良な人だ。婚約者を譲ってくれと真摯に頼めば聞き入れてくれるような気もする。
しかし、そうなった場合釣れるのは今ぐずっているアレである。釣ってすぐ、依頼人のベルナデットがアレを引き受けてくれるならともかく、この入れ替わりがどうしたら解消できるのか手掛かりすらない現状、下手すると私が一生アレの面倒を見るハメになる。
実に頭が痛い。ベルナデットの真意もわからない。
着慣れない重く窮屈なドレスを引きずって、私は広間を後にする。
廊下を歩きながら考える。この入れ替わりはなぜ起きたのだろう。単なる世界のバグなのか、はたまた何かの使命があるのか。
前者ならいい。いやよくない。でももし後者なら?すべてのことに理由があると偉人は言った。このポンコツだらけの世界に飛ばされた今、私は何をすべきだろうと自問する。
しばらく思考したあと、マーヤはカッと目を見開いて手を空中に向けて突き出した。
「そうだツッコミを極めよう!」
経験が浅くまだまだ未熟ですので、感想、評価大変参考になります。お気軽に残して行ってくださいませ^_^




