人類の危機に屁をこく男
その日、世界は危機に瀕していた。
巨大隕石が地球に接近し、NASAも自衛隊も万策尽きた。
唯一の希望は、日本の片田舎に住む冴えないサラリーマン・鈴木太郎だった。
「……屁をこいてください」
政府の特使は真顔でそう告げた。
「は?なんで俺が屁を……」
実は太郎の屁には、隕石を弾き飛ばす特殊な音波が含まれていたのだ。幼少期から「屁でガラスを割った」「屁で犬を気絶させた」など数々の伝説を残してきたが、まさか国家レベルで必要とされる日が来るとは思わなかった。
家族も近所も集まり、固唾をのんで見守る。太郎は決意を胸に、ズボンを少し下ろし、深呼吸をした。
「すぅぅぅぅ。」
「いまだ!!屁をこいてください!!!」
ブボボボボッ!!!
空気が震え、雲が割れ、空に閃光が走る。
数秒後、巨大隕石は見事に軌道を逸らし、無害な宇宙の彼方へと飛び去った。
「やったぁぁ!!」
歓声とともに、太郎は英雄となった。
その後、国連は公式に「屁の日」を制定し、毎年人類は一斉に屁をこく儀式を行うこととなったのだった。