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8. メジャーに行く選手、メジャーから帰る選手

 日本のプロ野球においては2年前、前人未到の記録がふたつ生まれた。


 ひとつは千葉オーシャン、佐伯投手のパーフェクト。日本のプロ野球界では21世紀になって初めてというだけで前人未到というわけではない。

 がこのパーフェクトは、奪三振19という日本タイ記録。

 さらにはそれまでの記録であった9連続奪三振を大きく上回る13連続奪三振という驚異的な新記録を樹立した。


 のみならず佐伯は次の先発した試合で、8イニングパーフェクト。合計17イニングパーフェクトという記録を成し遂げたのである。



 もうひとつは関東スワンズ、浦上の5打席連続ホームランの新記録である。

 2試合にまたがる記録であったが、

 1試合5本塁打、

 そして5打席連続本塁打は、日本のみならず、メジャーでもこれまで誰もなし得ていなかった記録である。

 5打数連続本塁打であっても、それを記録した選手は日米ともに皆無であったのだから大偉業である。



 そして今シーズンオフ、

 ともにまだ若い佐伯と浦上は、メジャーに移籍することになった。


 さらにはジェネラルスで長年エースとして君臨した高野。

 そして、その希望は持っていても移籍はまだ数年先と思われていたジェネラルスの主砲松本も今シーズンオフでのメジャーへの移籍を表明した。



 一方、今メジャーに在籍している選手の中で、レジェンドというべきふたりの選手、

 滝洋一郎と香坂信輔が、現役選手としてのラストは日本で迎えると、日本プロ野球への復帰を表明した。

以下は佐々木朗希投手の2試合連続パーフェクトが未完に終わった直後に本サイトに投稿した文章です。



嘘だろう。

やめろ、それはやめろ。

野球の歴史に対する侮辱だ。


昨日TVモニターに向かって、私は心の中で叫びました。

8回までパーフェクトを続けていた佐々木朗希投手の降板を知ったときです。


長い歴史と伝統に培われてきた野球。

その中で培われてきた、記録における常識というものが打ち破られる瞬間を見るということは、野球に限らずスポーツが与えることのできる最大クラスの感動なのに。


日本のプロ野球の歴史で28年ぶりにパーフェクトをやったピッチャーが、2試合連続パーフェクトをやる、

それがどんなに凄いことなのか。


その最上の物語を未完で終わらせてしまいました。



もし2試合連続パーフェクトをやったら、私が、佐々木朗希に贈ろうと思っていた言葉は


人間としてやってよいレベルを超えたことをあなたはしてしまった。

でした。


彼が長期に渡って、球界でトップの投手として活躍を続けるという未来を想定するのであれば、

観ている者をそんな気持ちにさせる

物語は作らないほうがよい、とは思います。


日常生活に、できすぎた物語は求めない

というほうが、粋 なのかな。


何か色々と考えてしまいました。



かつて、日本シリーズで、8回までパーフェクトを続けていた山井投手を降板させ、9回を守護神、岩瀬投手に託した中日ドラゴンズの落合監督。結果的に中日はその試合に勝ち、日本一になりましたが、その時の落合監督の采配には賛否両論がありました。


落合について書かれた本は読みましたし、監督としての彼の揺るぎない信念は敬服に値すると思っています。

が、この、日本シリーズでのパーフェクトを継続中だった山井を8回で交代させたことについては許せないという気持ちを私は持っていました。


勝ちに徹するとか、日本一になるとか、そういう日常的なこと、毎年繰り返されることを超えたこと。

スポーツには、時にそういったものを超えた、何十年たっても、世紀が変わっても、そのスポーツが続く限り、人々の間で語り継がれていくドラマが生まれる瞬間があります。


その瞬間に遭遇したら、ただの人間が日常的な思惑でそれを止めたらいけません。

神はどういうドラマをこのあと用意していたのか。

それを見届けるべきなのではないかと思います。

それが、そのスポーツの持つ歴史に対する敬意でもあると思います。


2試合連続パーフェクト。

日本のプロ野球の歴史でも、大リーグの歴史でも、常識では考えられないという観点からみて、私はこれを超えた記録を思いつきません。


私は2試合連続パーフェクトというのは、もし、佐々木朗希の投手生命が、その試合で終わったとしても、それを引き換えにするだけの価値のある記録だと思います。


それは、ずば抜けた力量を持つというだけでなく、確率論的にいっても、神に選ばれたとしか思えない運命が伴わなければ成し遂げることはできない奇跡の記録だと思うからです。


19世紀末から続く大リーグの歴史、

1936年から続く日本のプロ野球の歴史。

その歴史の中に、ひときわ輝く奇跡の記録を刻む。

野球を一生の職業として選んだ人間に取って、それ以上の栄光はないのではないかと、私は思います。


でも、そんなことより、毎年繰り返されるペナントレースで日本一を目指すとか、

日常的に好投を続けて、長期にわたる持久力が必要な通算成績による超一流投手を目指すということにより大きな価値がある、という考え方が主流なのであれば、私の言うことは、実を伴わない理想にとらわれたヒロイズムにすぎないということになるでしょう。


ヒロイズムというのは、年齢を重ねると、たしかに邪魔な感情です。

いえ、今振り返ると、少年時代であっても、そういうものにはとらわれないほうが良いと思う感情です。


ゆえに私も、実のところは、そういうことにいちいち心を揺さぶられるのはやめておいたほうが良いと思っています。

でも、大谷翔平を観ていると、そして、この2試合の佐々木朗希を見ると、自分が否定したはずのヒロイズム的心情が、少年時代のように心の中に湧き上がってしまいます。


疲れました。



大リーグ通で、かなり以前ですが大リーグ放送がまだ日常的では無かった時代にテレビでコメンテーターをしたことがあり、英語に堪能で大リーグに関する文献を原書で読み込んでいた友人から、

大リーグでは、2試合連続ノーヒットノーランはあるが、9回と8回 17イニングパーフェクトという記録は無いと思うというコメントを寄せられました。


多分、無いでしょうね。


2試合連続ノーヒットノーランをしたのは、ジョミーバンダーミーア。

私は大学時代に、大リーグ名勝負物語と言う単行本で読んで、凄いなあと思いましたが、中等学校野球大会で、嶋清一も2試合連続ノーヒットノーランをやっています。


リトルリーグであれば27連続三振のパーフェクトというような記録もあったと思いますが、対戦相手の力量に大きな差があれば、可能でしょう。


が、プロ野球のレベルで、2試合連続パーフェクトが達成されていたら、それをいったいどういう感情で現実のことと受けとめればよいのか、

私は怖かったです。

でも17回連続パーフェクトというのも、現実離れしています。


バッターに例えるなら、

2試合連続パーフェクトは、2試合連続 4打数連続ホームラン。


現時点の佐々木朗希は、7打数連続ホームランくらいの記録に相当するでしょうか。

まだ継続中で、さらに記録を伸ばすのかどうか。


フォアボールがひとつでもあったらそこで終わりという意味では、7打席連続ホームランとしたほうが良いかもしれません(MLBでも、NPBでも5打席連続ホームランもまだ誰も成し遂げていない記録です。5打数連続ホームランも、1試合5ホームランもまだ誰もやっていなかったと思います)。


MLBにも、NPBにも、完全試合を2回やった投手はひとりもいないのですから、

2試合連続完全試合は、やはり人間がやってよい記録だとは思えません。


完全試合は、今の出現頻度を考慮すると、大相撲では50連勝くらいに相当するかな、と思いますので、(双葉山以降の、預り、引分のない完全連勝)

2試合連続完全試合は、100連勝に相当するくらいでしょうか。

でも、2試合連続完全試合よりは、100連勝のほうが、まだ現実的なイメージです。



前述の友人からは、18イニングパーフェクトができなかったことを残念がるより17イニングパーフェクトを達成したことを賞賛したいという言葉も寄せられました。


それはそのとおりです。


昨日の試合、9回までパーフェクトだったとしても、ロッテは、点を取れていなかったのですから、延長戦になって、そこで完全試合が途絶えたかもしれません。

18回以上を達成していたとしても、2試合連続完全試合にはならなかったかもしれません。

でも、可能性がある限り、佐々木朗希の将来を考えて、などという、日常的な理由で交代させてよい記録では無かったと私は思います。


私は、実際の歴史であっても、スポーツの歴史であっても、持久性を伴う長期に渡って超一流であるためには、凄い記録であっても常識の範囲にとどまって置くことが必要なのではないかというイメージを持っています。


常識を超えた凄いことをやってしまうと、持久力には結びつかないのではないか。


昨年の大谷翔平、そして、この2試合の佐々木朗希には、それを感じます。

長く超一流であろうとするなら、常識の範囲内に収まっておいたほうが良いですよ、というような気持ちです。


大谷翔平が昨年のようなシーズンをこれから何年も続けるのなら。

そして佐々木朗希が今回のようなことをこれから何回もしてしまうのなら、私の理論、常識は崩壊します。


別の友人から、次の日曜日、京セラドームに、佐々木朗希対オリックス戦を観に行きませんか、というお誘いを受けました。

チケットが取れるのなら観たいと思いますが、来週の日曜は私は予定が入っていました。


でもそれで良かったという気もします。

今の佐々木朗希を見るのは怖いです。


私は野球にしろ、相撲にしろ記録に対する興味から入ったので、

昭和38年から59年間見続けてきたなかで、さらには、本や雑誌を読んで知った、野球の歴史、相撲の歴史。

それらによって自分の中で培われてきた、記録における常識の範囲というものが、壊されてしまう、というのは、精神が崩壊してしまうような、

畏れを感じてしまうのです。


昨日の佐々木朗希のピッチング、TVで見ていて本当に怖かったです。


大谷翔平と佐々木朗希には、早く私の考える常識の範囲内の選手になってほしいです。私の精神が持ちません。


我ながら面倒くさい奴で、すみません。


(以下 2022年4月19日追記)

MLBでも、NPBでもまだ誰もやっていない5打席連続ホームランを見たとしても、一昨日、私が感じたレベルの怖さは感じないと思います。

その連続ホームランが6打席、7打席となったときに、同種のレベルの怖さを感じるだろうなと思います。


たしかに7打席連続ホームランも、起こり得ることなのでしょうね。

可能性は、決してゼロではない。


10打席連続ホームランも、27打者連続3球三振81球パーフェクトも、それが起こる可能性はゼロではない。

ゼロということもまたありえない。


極端な例を挙げましたが、私が一昨日感じた怖さをどう表現したら良いのか苦慮します。


野球を現在と未来の観点からだけで見る人でなく、過去の歴史、記録も合わせて見る人であれば、一昨日の佐々木朗希には同種の戦慄をおぼえるはずだ、と思っていたのですが、ネットでの関連記事を色々読むと、私の独りよがりだったようです。


プロ野球のレベルであれば、完全試合というものは、圧倒的な力の差があるからといってそれだけでできるものではない、と思っています。

なぜなら、4割打者がずっと出現しないように。

優勝チームであってもシーズン成績が7割を超えるチームがめったには出現しないように、

野球というのは、偶然性の要素がかなり強いスポーツだと思うからです。


完全試合は特別なこと、偶然の僥倖に恵まれなければできないことと思っていますし、その特別なことを同一人が2試合続けたとしたら、やっぱり私には戦慄すべき出来事です。

結論としては、佐々木朗希は、2試合連続完全試合は、できなかったわけですけど。


まだ継続中の記録としては、佐々木朗希は、現在52打者連続アウト。

メジャーリーグでは46打者連続アウトというのが最高記録だそうです。想像していたよりは大きな数字でした。


現時点でも世界記録ですが、46 → 52 なら まだ、起こり得ること、と考えてもよいのかな、とも思いますが、この数字がいったいどこまで伸びるのか。驚愕すべき戦慄の領域まで伸びるのか。

とりあえず、先ずは54連続アウトに到達するかどうか。

27×2 史上初の2試合連続完全試合相当の連続アウトということになります。


降板した瞬間、人間が見ることを許されない領域に属する出来事を、見ないですんだ、という

ホッとしたような気持ちにもなった、というのも本音です。



2022年4月19日追記


私の記憶では、かつて少年マガジンに連載されていた、

水島新司の「光の小次郎」という作品で、ドラフト会議で12球団全てから1位指名を受け、高校卒で武蔵オリオールズに入団した

新田小次郎が、新人の年に完全試合をやり、さらに同一シーズンで、2度目の完全試合をやろうとしたという場面があったことを記憶しています。

この2度目の完全試合が、成し遂げられたかどうだったかについては、明確な記憶はないのですが、いずれにしても2試合連続では無かったと思います。


ウィキペディアで検索したら、完全試合2回 となっていました。

また高卒すぐではなく、ドラフト会議の制度への抗議の意味で、1年浪人後の入団でした。1試合19奪三振も記録したようです。


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