日常
体を重ねるのは好きだ。気持ちいいのもそうだが、何より寂しさを紛らわしてくれる。行為中の一体感は普通では味わえないコミュニケーションだろう。
日曜日の朝。楓と朝食をとった後2人で何処かに出かけないかと言う話になった。どちらもインドア派なのだが、たまには外出するのも良い。
服を見て回る。楓は高級店にでも行くのかと思ったが足を運んだのは普通より少し高いくらいのブランドだった。意外だと言ったら答えはシンプルだった。
「服に興味ない」
と言うことで下着類と衣服を二着ほどを購入した。
俺も少し買いたいものがあったので別々で行動する。必要品を買って帰ると女の子から声をかけられた。
「お兄さん。今買い物中ですか〜?良かったらあたしたちとお茶しません?」
いつものやつだ。インドア派になった理由の一つに逆ナンされまくると言うものがあった。普通の人からしたら羨ましがられるらしいのだが、当の本人はたまったもんじゃない。
そして俺はいつも断れない。断ろうとすると凄まじい罪悪感が襲うのだ。相手が無駄に期待するのでやめた方が良いのは正論だが、人は正論だけでは生きていけない。
「そうだね。少しだけなーー」
「すいません。この人、私の彼氏なんで」
横を見る。そこには腕を絡ませてくる楓がいた。小柄な彼女だが今はとても大きく見える。そのまま腕を引っ張られて連れ去られた。
「お邪魔だったかしら」
少し硬い声で彼女は言う。
「いや、そんなことはない。助かったよ。断るの苦手なんだ」
「苦手とか言うレベルじゃないわね。今日は私との日でしょ?約束は守ってくれないと」
「そうだよね。ごめん」
しゅんとなって反省する。自分でも断りたかった。しかしいつも口から出るのは正反対の言葉だ。こんな自分が憎い。そう思って唇を噛む。
「いや、私こそごめん。少し言いすぎた」
しかし絡み合う手を一向に離さない。これは俺への罰なのだろう。嬉しさしか感じないが。
「家に帰ろう。外には出るものじゃない」
「同意見だ」
僕たちは気が合う。そのまま急いで楓のマンションに帰った。そして荷物を下ろす間も無く彼女から求められた。
「私、とても嫌な気持ちだわ。だからこの気持ちを忘れさせて?」
俺の答えは一つだ。
「仰せのままに」
俺たちは長く絡み合った。
♦︎♦︎♦︎
目が覚めると楓の部屋にいた。あたりは相変わらず可愛らしいぬいぐるみで埋め尽くされている。
「おはよう」
楓から声がかけられた。どうやら今日は彼女が先に起きたようだ。上半身を出してその着痩せする胸を曝け出している。
「おはよう。暇じゃなかった?」
「そうでもないわ。寝ているあなたを見つめるのも楽しかった」
彼女は嬉しそうだ。今日は日曜日で他のセフレと会う予定だったのだがキャンセルした。なぜか楓といたい気分だった。
「今日は私が朝食を作ってもいい?今日はうまく行く気がするの」
「いいよ。楓の手料理は楽しみだ」
彼女はパンケーキを作ると言っていたが結果的に出てきたのは焦げて原型もないなにかだった。
「次から朝食は俺が作るね」
「はい。よろしくお願いします」
楓は悔しそうな顔でパンケーキだったものを食べた。
その後は2人でくっつきながらそれぞれ自由にしていた。俺は本を読んでいたし彼女は携帯のゲームをやっていた。意外なことにゲーム好きで1人でいる時はほとんどゲームで遊んでいるのだと言う。
彼女といる時間はとても心地いい。隣に彼女の熱を感じるだけで生きる気力が湧いてくる。楓も同じ気持ちであってほしいと思うが、それは自分のエゴだ。そんな資格は俺にはない。
隣でゲームをする彼女を見つめる。するとこちらを見つめ返してきて頬にキスをした。俺はそのまま彼女を押し倒して甘露な体を堪能した。