表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

最低

 月曜日。外はさんさんと晴れていてうんざりとした湿気が絡みついてくる。学校へ登校しながら朝テストの勉強をしていた。


 勉強はあまり好きではない。数学や物理は得意なのだが、社会が一番苦手だ。過去の人物の不祥事を永遠と覚えなくてはならないのは苦痛だ。


 そういえばと彼女のことを考える。当然おとといあった楓のことだ。彼女は学校一の美人であると同時に学校一の才女でもあった。全ての科目が上位に入っており成績表はオール5なのだとか。


 やはり人生は不平等だ。自分の顔を見てもそれは常日頃思う。結局感じるのは虚しさだけだ。それは変わらない。


 学校について自分の席に座る。友達はいないので誰にも挨拶をしない。楓も別のクラスなので普段会うことはない。まだホームルームまで時間があるので本を読む。今日はノンフィクションで世界の自然破壊についてだ。


 しばらく本を読んでいると肩を叩かれた。振り返ると楓がいた。


「おはよう」


「おはよう楓。どうしたんだ?」


「ちょっときて」


 手を繋いで連れ出された。どこに行くのかと尋ねると学校の中庭だと言う。


「そういえばあなたと連絡先を交換してないなと思って」


 そう言って携帯を取り出す。連絡を交換した後楓はこう切り出した。


「それと、依頼なんだけど。今度から毎週末、私を抱いて欲しいの」


 意味がわからなかった。が、自分には得しかないので承諾する。


「いいけど、どうして?」


「どうしてもよ。あなたがいいの。それだけよ」


 そう言うと彼女は逃げるように自分の教室へと戻っていった。


 俺も自分の教室へと戻ると、男子たちから強い視線を感じた。中にはわかりやすく舌打ちしている奴もいて嫉妬していることは明白だった。


 優越感に浸る。たまにはこう言う経験もしていいだろう。そう満足した俺はホームルームが始まるまで本を読むのだった。



♦︎♦︎♦︎



「ねぇ、好きな人でもできた?」


 そう聞かれた。隣にいるのはセフレの1人で学校の二つ上の先輩だ。学校が終わってからそのまま彼女の家へお邪魔している。


「どうしてそう思うんですか?」


「うーん、なんとなく?女ってそう言うのわかるのよ」


 そう言って彼女は胸にぐりぐりと自分の頭を押し当てた。少しくすぐったい。


「あーあ。羨ましいなー。君が好きになる女ってどんな人なんだろう」


「別に、好きな人なんていませんよ」


「でも今日、あんまりやる気なかったでしょ」


 そう言われると少し痛い。確かにいつもよりも盛り上がらなかったかもしれない。頭の片隅にはいつも彼女がいた。


「人を好きになるって、よくわかりません」


「そーかな、結構簡単だと思うけど。それでどう?うちの彼氏にならない?」


「なりません」


「まーそーだよねー。知ってた」


 そう言ってケラケラと笑う。しかし途中で真面目な顔になって呟く。


「好きになる人がいたら、すぐに行動しなさい。人間ってのは運命があるのよ。すぐ動かないと、どこかへ消えてしまうかもしれないよ」


「肝に銘じておきます」


「まぁ、私も彼氏いたことないんだけどねー」


「えぇ……」


 誰かが消えることによって悲しむ。そんな人はいるのだろうか。母親は蒸発し父親も金だけは入れてくれるがほぼ家に帰ってこない。どちらももう消えてしまったものだ。


 だけど、やっぱり彼女の顔が浮かぶ。初めて悲しいと感じた。好きかどうかはわからないけど。


 1人で悶々と考えていると先輩が声をかけた。


「まぁ今日親いないし泊まっていきな。久しぶりに祈くんの手料理食べたいなー」


「そうさせていただきます。チャーハンとかどうですか?」


「いいね!」


 こうして俺はほとんどを他の人の家で過ごす。家に帰っても誰もいないからだ。こうやって寂しさを紛らわせるのは歪んでいると自分でも思う。しかしこれしか知らないのだ。これだけで生きてきたようなものだ。あの時強姦されてから、こうな運命は決まっていたのだ。


 こうして夜は沈んで行く。体を交わることで紛らすこの感情は底なしの物だとしても、俺は止めることはないだろう。



♦︎♦︎♦︎



 土曜日。楓との約束通り、マンションの前まで来ていた。すると彼女が迎えにきてくれて部屋に入った。入るのは2回目だがその度にメルヘンな気持ちになる。アンダーワールドに入ったアリスのように。


「早速する?」


「や、その前にさ。映画見ない?」


 そう俺は提案した。彼女は少し恥ずかしそうにしている。可愛い。


「そ、そうね。それがいいわね。fetplixには入っているからそれで見ましょう」


 俺たちはその後映画を二つ見た。一つはラブコメでもう一つはsfだった。ラブコメの方はイマイチだったがsfは迫力満点でお互いに楽しめた。


 お互い映画の最後あたりでソワソワし出した。期待していたのだ。映画が終わって感想も言わず、すぐに唇を重ねた。前よりも激しい音が部屋に響き渡る。


「我慢できなかったわ」


 目を見つめながら彼女は瞳孔が開いている。


「俺もだ」


 俺たちは一日中、お互いの体を求めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ