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次の日

 目が覚める。窓から少し光が漏れており朝になったことがわかる。腕の中には学校一の美女楓がおり、昨日のことを思い出して赤面した。こんなに満足感なある朝は初めてだ。


 彼女を見る。お互い裸で寝ていたので白い肌が目の前に飛び込んできた。しなやかな鎖骨が美しく、触りたくなったが彼女を起こしたくないのでやめた。しばらくはこの余韻に浸っていたい。


 眠る彼女は相もかわらず美しい。昨日の情景を思い出して再び赤面する。何度も思い出すであろうあの甘美な時間は、一瞬のようにも永遠のようにも感じられた。


 あれこれと考えていると彼女が目を覚ました。寝起きは悪いのか大きな目を細めながら目を擦っている。辺りを見渡して目と目が合う。すると彼女まで赤面し出した。昨日のことを思い出しているのだろう。


「おっおはようございます」


 なぜか敬語だ。すまし顔の彼女も美しいが、あわあわした彼女も可愛らしい。


「おはよう」


 慣れた手つきで首にキスをした。昨日の跡を覆うように。この跡は誰にも見られたくはなかった。こんな気持ちは初めてだ。


「朝食を作りますね……っと」


 起きあがろうとする彼女だが昨日の余韻からか動くのが難しいらしい。幸いにも土曜日なので今日は休みだ。ゆっくりとしてもらいたい。


「俺が作るよ。少しキッチン借りてもいい?見られたくないものとかあったらアレだけど……」


「いや、大丈夫です。じゃあお願いしてもよろしいですか?」


 俺を頼ってくれる。朝の彼女を知っているのは俺だけなのだと思うと、なぜか嬉しくなった。


「じゃあ失礼してっと」


 ベッドから飛び降り服を着る。昨日の制服のままだが着ないよりはマシだろう。


 キッチンへと向かうとそこは綺麗に整頓されてあった。どこに何があるのかわかりやすく、使いやすい。彼女の性格がそのまま現れているようだった。


 食材があまりなかったのでベーコンエッグとブロッコリー、焼いたパンというレパートリーになった。料理はそこそこできる方だが、朝食は軽く取ったほうがいいと考えたからである。


 寝室へと向かうと彼女は携帯を見ていた。


「ごめん。朝ごはん作らせちゃって」


 やっと目が覚めたのか敬語が抜けてきた。


「ううん。簡単な男料理だよ」


 目を細めながら言う。リビングに朝食を置いてきたので移動しなければならない。が、楓は動けない。なので秘策を使うことにした。


「失礼してっと」


「キャ!」


 楓をお姫様抱っこで持ち上げる。可愛らしい声が漏れた。そのままリビングへと運んでいく。彼女は羽毛のように軽かった。


「どうぞ、お嬢様」


 ソファーへと彼女を下ろす。彼女は微妙な顔でこちらを見ていた。


「歩けたのに……」


「昨日は無理させちゃったからね。そのお詫びですよ、お嬢様」


「そのお嬢様って言うの、やめて」


 芯の通った声で言う。本当に嫌そうだ。


「ごめん。つい……」


「いや、私も強く言いすぎた。こちらこそごめん」


 二人で謝り合う。微妙な空気が流れたので切り替えて食事を取る。


「いただきます」


 声を重ねて言う。簡単な料理だが悪くない出来だと思っている。感想を尋ねると美味しいと返ってきた。


「私は料理が苦手だから助かる」


「え、料理できないのか?」


 意外だ。てっきりなんでもできるものだと思っていた。


「そんな私だって完璧じゃないわ。欠点の一つや二つくらいある」


 そう言って頬を膨らませる。俺しか見たことのない顔がたくさん見えて顔がニヤける。


「じゃあ普段料理はどうしているんだ?外食?」


「技術やサービスは日々進化しているのよ。私はOberを使っているわ」


 携帯を見せてドヤ顔を放つ。別に自慢することではないのだとは思うが。やはり金があるんだなと再認識した。


 ご飯も食べ終わり解散の流れになるのかと思ったが、楓がもっと話したいと言い出したので昨日飲めなかったお茶を入れる。アールグレイにミルクと砂糖だ。


「楓はなんで一人暮らししてるんだ?家族は?」


「私が無理やり一人暮らししたいと言ったの。できないなら家出すると駄々をこねたんだ。学校の近くの最高級マンションなら許してくれたから。駄々はこねるべきね」


 なんとも子供らしい一面を聞いて学校でのイメージが完全に崩れた。


「今度はこっちの質問。セフレは何人いるの?」


 急な質問に紅茶を持っている手が止まる。少しだけむせたあと質問に答える。


「正直覚えてないな。多分10人から15人くらいじゃない?結構曖昧だよ」


「なんで付き合わないでセフレなの?」


 質問の核心をついてきた。


「それは……寂しいから、かな」


「寂しいの?」


「うん、寂しい」


「一人じゃ満足できないってこと?」


「そう言うことじゃないんだ。自分でもうまく説明できないな」


 そう、俺は流されるだけなんだ。人に言われたらやってしまう。この性格はずっと治したいと思っている。


「難しいわね」


「難しいよ」


 お昼前までずっと2人で喋っていた。そのまま帰ることになったので彼女はエントランスまで来てくれる。離れるのが無性に寂しくて、また彼女を求めてしまいそうになった。初めての感覚だ。


 そのまま帰路について彼女のことについて考える。結局彼女との関係はなんなのだろうか。俺はいつもそうだ。曖昧なままにして嫌われる。今まではそれで良かったが、彼女には嫌われたくなかった。


 空を見上げた。ひどく晴れていて俺の顔を焼き付ける。それが自分への罰のような気がした。

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