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おっさんは田舎に引っ込んでなぜか宇宙に行った  作者: 雪だるま


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レポート52:「買い物も気を遣う」

「買い物も気を遣う」



俺たちは拠点の食事事情を改善するために、食料の買い出しに村から移動して隣町のスーパーにやってきていた。

買い物カートを持って気がついたが……。


「なあ、実際食材を買い込むのって結構大変だな」

「そうですね。全員カートもっていくなんてのは珍しいですから」

「でもさ意外と楽しいよ。これ」


カカリアは買い物カートを持って移動するのが新鮮なようで笑顔だが、俺のカートの中には満載になった野菜の山。

カートを押すのも重く感じるレベルなので清算の時もちょっと嫌気がさしている。

俺は小心者であり、元々レジ打ちのバイトもしたことがあるので、大量に商品を積んでやってくる買い物客へのイメージはあまりよくない。

確かに売り上げはかなりあるが、逆に後ろに並んでいるお客さんの視線がきついのだ。


さっさとやれよという無言の圧力。


まあ、全員そうだとは言わないが、やはり待たせているのは此方なので、気まずいというのあるのだ。

ついでに言うと領収書とか言うとさらにレジの時間が延びるので圧力が強くなったりする。

ちなみに、今の惑星調査関係の経費はレシートでいいので正直助かっている。

買い物に出る前に、食事を提供するってことを佐藤さんに話したんだが……。


『ああ、もちろん経費で構いませんよ。露骨な高級品だとあれですが、普通のスーパーで買うんですよね?』


なので普通に問題ないわけだ。

福利厚生の一環になるらしい。

ちなみにお菓子やジュースも大丈夫だそうなのでカカリアと葵ちゃんはこぞって山ほどカートに入れている。

所詮、スーパーのお菓子や飲み物なので沢山買っても程度は知れていたが。


「あの? どうかしましたか?」

「ああ、レジ待ちの人にも悪いから、まずは俺のカート清算してくる。その後、お肉とか魚買おう。2人はまずお菓子と飲み物優先で」

「わかったよ」

「わかりました」


俺はそう告げると、野菜満載のカートを押して清算をして、車に乗せるふりをしてそのまま宇宙船へと転送する。

宇宙船の保管庫には食料品を劣化させることなく保存する機能があるので便利な限りだ。

このシステムを拠点にも置くということだから便利だよな。

空になったカートを押して俺はまたお店へと戻っていると、駐車場で車と車の間から、黒髪の椿とはまた違う日本美人さんが現れる。

ぶつかる距離ではないが、とりあえずカートを止めて相手が通り過ぎるのを待っていると、なぜかその女性はお店に向かうことは無くこちらに視線を向けてきた。


いや、それは気のせいだろう。

日本美人、椿と同じぐらい、つまりめちゃくちゃ美人となる。

そんな人が凡人で田舎に引っ込んだ俺に視線を送るわけもない。

それに服装は和装ではなく普通の……とは言い難いがブランドものらしい高そうな服を着ているのだ。

所謂お嬢様と思える容姿。

俺とは住む世界が違うので、俺はさっさと意識を外し彼女をよけるようにカートを操作して横を通り過ぎることにする。


「……どういうこと?」


耳に入って来た彼女の言葉だが、俺は意味が分からず聞き流して歩みを進める。

何か忘れ物でもしたのだろうと判断して俺はお店へと入る。


お店の中は賑やかだ。

先ほど女性と会って何か緊張感みたいなものがあったがそれが無くなってホッとする。

あれか、美人に会って緊張でもしていたんだろう。

俺はそうなっとくして、カカリアと葵ちゃんを探して店内を歩く。

さっきはお菓子を選んでくれって言ってたからお菓子のコーナーか?


「お、いたいた」


予想通り2人はお菓子コーナーで色々お菓子を二台目のカートに入れていた。

まあ、いいのか?

量が多いが賞味期限とかは宇宙技術で長持ちするし、買い込むほうが次までの期間が長くなる。

野菜の方は、物によって味が違うから試しってものがあるから一台だけにしていた。

とかなんとか考えていると……。


「あ、やっほー裕也。戻って来たね」

「って、どうしたんですか? 何か難しい顔してますけど?」

「いや、山のように積まれているお菓子に戦慄していた」


そうだ。

俺はこれほどのお菓子の山を見たことがない。

だから動揺していたのだ。


「あはは。裕也ってお菓子食べないもんね」

「そういえば、お家にはあまりお菓子は無かったですね」

「お茶請けで置いてるぐらいで、自分の消費はないからな。カカリアたちは好きみたいだけど」

「だって甘くておいしいじゃん。ね、葵」

「ねー」


仲がいいことだ。

とりあえず、見る分には十分にあるようなので、清算をすることにする。

カート二台分の買い物、しかもお菓子だから、レジのおばさんにどこかの買い出しですか?と聞かれてしまう。


「ええ。そうです」


と、さわやかな笑顔で答えた。

嘘っていうのはこういう風に簡単に付けるようになるんだよな。

大人が汚れていく過程がわかるな。

素直に言えばと思うが、そういうとそんなに食べるの? とか、食べきれないでしょという視線が刺さるからな。

それでレジを通り過ぎ、袋にお菓子を詰めていると……。


「ねえ、なんでどこかの買い出しって言ってたの?」

「まあ、間違ってない気もしますけど、私たちが食べる分って言わないんですか?」


そう、素直に不思議だって感じで質問してきた。


「面と向かって、ふとるわよ。とか肌に悪いわよ。とか言われたいか? 向こうは親切心だけどな」

「「……」」


俺の答えに沈黙する2人。

親切心で毒を吐かれるのは嫌だろう。


「多分2人は調整して食べるつもりなんだろうが、ここまで大量にあると保存も難しいと考えるだろうし、そうなると……」

「そっか、この量を一気に、もしくはそれなりに食べると思うのか」

「なるほど。だとしたらこんなにお菓子を食べるとか、止めますよね」

「ああ、だから善意なんだ。とはいえ詳しい説明なんかできないから、こういう風に適当にごまかすわけだ」

「必要な嘘ってわけだね」

「わかりました」


納得した2人を連れて、一緒に車に戻り先ほどと同じように荷物を宇宙船に一旦輸送する。

さて、戻って最後の肉や魚類をと思っていると、また駐車場で先ほどの日本美人さんがいることに気が付く。

2人もその人を見たようで、素直に感想を漏らす。


「うわー、綺麗な人ですね。椿さんとはまた別の感じ」

「おー、なんていうか椿はおっとりしている感じだけど、あの人キツそうだね」


確かに、カカリアの言う通りちょっと気の強そうな感じはする。


「買い物ですかね?」

「そりゃ、スーパーにいるんだからそうじゃない?」

「まあ、そうだろうな」


俺は先ほども会ったということは言わずに再び彼女の横を通り過ぎる。

彼女はやはりこちらを見ているようで、今度は話が聞こえるような距離ではないので何も聞こえなかったが、目を見開いて驚いているように見えた。

……いや、さっきも思ったはずだ。

気のせいだと。自意識過剰だ。

あの美人がこちらに注目するわけがない。


なんか変な引っ掛かりを感じつつもわざわざ問題を引き込むこともないだろうという判断で、スーパーに戻りお肉や魚を買って駐車場に戻ったときにはいなかったので、やはり気のせいなのだと思い俺たちは家に戻る。


家には誰もいない。

当然だ。

椿もセージも拠点の方にいるからな。

ここに来たのは車を置くためだ。

ワープでポンと置くと万が一見られたりもするから、ちゃんと帰っていると周りに示すためにこういうことをしている。

実にめんどくさいが、こういう工作を怠ると見た人の記憶をいじることになる。

アフターフォローを考えるとそっちの方が面倒なのでキチンとする。


ちなみに俺たち全員が拠点に行ってる時の訪問客などは、セージが設置してくれた警報装置に反応があって連絡が来るようになっているから問題はない。

とはいえ、だからと言って戸締りをしなくていいわけでもないので。


「よし、戸締りの確認をちゃんとするぞ」

「「おー」」


こうして家の戸締りを確認し、人形が勝手に動いていないことも確認して拠点に戻るのであった。



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