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力の根源

次話タイトルは『優しい時間』

「極端に言ってしまえば私達の力の根源は『思い』と『言葉』なんだ。私達はそれぞれが『ある存在』を媒体にして、それらを一緒にして発動する感じなのだけど……」


 ゆっくりと人差し指で宙に円を描きながら、品子が話すのをつぐみは黙って聞く。


「私達の力はね、思いの強さで変わってくる。例えばね。ある人の力は、一時的に人の記憶を操ったり消したりできる。その力を思いっきり使うと……」


 手のひらを大きく広げ、つぐみの前に出してきた。


「相手の記憶を、全て消すことも出来ちゃう。さらには相手の生きる気力とかも消すことも出来ちゃう。ばーんってね」

「そんな力まで存在するのですか」

「うん、でも使いすぎてもこちらも危険。反動まではいかなくても、強く使えば自分にも負担がかかる。自分の能力に見合わない力を使おうとすると、自分も壊れちゃう。」


 驚くつぐみをちらりと見て、品子は続けていく。


「また別のある人は、事故で力と身体能力を失ってしまった。だけど、思いの力でその一部を取り戻したんだ。すごいよね。そこまでいくと執念に近いのだろうけど」


 手のひらを見つめながら語る品子の顔は、少し悲しそうだ。


「ざっくり言っちゃえば、私達の力は『思い』、いやそれよりも強い『(おも)い』で発動可能になるんだ。……さてっと、本題に戻そうか。どうやってその店を探そうか」


 重かった雰囲気を変えるように、品子はくるりと表情を変える。


「確かに。強い思いを持って店を探すって、どうやればいいんでしょうね?」


 つぐみの問いかけに、品子は拳をぐっと握る。


「店! 見つけてやるぞ! この野郎! な心意気で探せば見つかるかなぁ?」

「な、何となくですが。多分それでは無理だと思います」

「なぁ、品子。これってやっぱり、惟之(これゆき)さんに一度みてもらうべきだろう?」


 ヒイラギが、品子に口を開く。

 その言葉に品子はあからさまに表情を変える。


「えー。あいつに頼むのやだ、言い出しっぺのヒイラギが依頼を出してよ」

「何が言い出しっぺだよ。お前、絶対わかっていたけど、言わなかっただけだろ」

「あの、惟之さんって一体?」


 つぐみの問いかけに、品子はうんざりとした表情で答えた。


「あぁ、惟之っていうのはね。さっき言っていた解析組のリーダー。すっげぇ意地悪で、私にいつもひどい扱いしてくる、極悪非道(ごくあくひどう)の垂れ目人間なんだ」

「知らない相手なのをいいことに、嘘を言うなよ。あんた騙されんなよ」


 わいわいと言ってくる二人につぐみは戸惑う。

 そんな時、廊下からシヤの声が掛かる。


「つぐみさん。お風呂どうぞ」


 その声を聞いた品子は、シヤに駆け寄ると頬ずりを始める。


「あー! 湯上りのシヤは、やっぱりかわいいねぇ!」


 凄い速さの、頬ずりだ。

 シヤはそれを無表情に受け入れている。


「洗面台に、品子姉さんのお泊りセットを一つ置いておきました。それを使ってもらえばいいのですよね?」

「そう。冬野君、遠慮なく使ってね!」

「あ、ありがとうございます」


 高速頬ずりを続けている品子を後にして、洗面台に向かいながらつぐみは思う。

 ――帰ってくる頃には、シヤの首は取れているのではないだろうかと。


◇◇◇◇◇


「うわぁ、可愛い!」


 おもわずつぐみの口から声が出た。

 洗面台には、黄色の犬の描かれたパジャマが置いてある。

 パジャマの上には巾着のポーチが置いてあり、中には歯ブラシや化粧水、さらには使い捨て用のペーパーショーツまで入っていた。

 シャワーで軽く汗を流してから、浴槽につかり足を伸ばす。

 自分の部屋の狭い浴室と違って、しっかりと足が伸ばせるお風呂に入るのは久しぶりだとつぐみは思う。

 大きく伸びをすると、自分の動きに応じてちゃぷりと音を立てる水音がとても心地いい。


「それにしても、まいったなぁ。私の行きつけのスーパーの情報まで載っているなんて」


 資料の情報の凄さに、改めてつぐみは驚かされていた。

 不明者に対する詳細な情報もさることながら、沙十美の参考資料の方に、つぐみのデータまで入っていたのだ。

 つぐみの家庭事情のデータが無いのは、品子がヒイラギ達に見せないように配慮してくれていたのだろう。


 つぐみの話は置いておいてだ。

 どうやって店を見つけたらいいのだろう。

 早くしないとまた、行方不明の人が出てしまう。

 資料を読むために泊まってほしいという品子の意図(いと)も、そこに在るのだろう。


「もう少し読み込んだら、何かわかるかもしれない。もう少し頑張ってみよう!」


 決意を新たに浴槽からざばりと立ち上がる。


「私にだから、出来ることをやるんだ!」

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