二話 ロケンロー!
思い出した。音楽をやっていた頃だ。弾き語りでライブに出て、振られた彼女への思いを綴った歌だった。本当はバンドでやろうとしていた歌だったが、格好悪すぎる、臭すぎる、情けなさすぎる、恥ずかしすぎる、とバンドメンバーに言われ却下となった歌を歌った時だ。
だんだん思い出して来た。そのライブの出番は前座だった。アニソンの曲をいくつか歌っていたプロミュージシャンの前座。僕は無名のアマチュア・ミュージシャン。どうせ誰も聴きゃあしないだろう、だったらせめて自分が歌いたい歌を歌おうと思ったのだった。
だが、前座で誰も聴いてくれないと言ってもギャラはもらってるし、いい加減なことは出来ない。だから僕は心を込めて歌った。どこかにいる彼女に届けと。
♪あなたのことを思って こうして歌を書いてみても〜♪
出だしのAメロで僕は泣き出してしまった。それから最後まで泣きながら歌った。客の何人かは笑って見ていたような気がするが、ほぼ誰も聴いていなかった。
泣きながらギターを抱え楽屋に戻ると、出番を控えるプロミュージシャンだけが、「とても良かったよ」と言ってくれた。
そうだ。どうせ誰も読んでくれないのなら、自分の書きたいことを書こう。彼女への思いを綴っていこう。振られちまったけど、再度ここで愛の告白だ!もしかしたら、0.00001%くらいの確率で彼女が見るかも知れないし、そうなるとまた会えるかも知れないし!
誰も見てないと思うけど、前向きな0PV野郎と呼んでくれ!ロケンロー!