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6.殺さずに口封じ



「………」



 ファーストによって半殺しにされたアマンはあれ以降全く喋らなくなっていた。顔面もひどく腫れており所々血が滲んでいる。一応この世界には治癒魔術が存在するので治すのは難しい事では無いのだが。



「えっと~…まぁなんにせよお前に生き物をむやみに殺さないっていう良心があったみたいで良かったよ(うっわ、いったそ~)」



 華永昴はアマンが今どんな気持ちなのかを知る由もない為とりあえず愛想笑いを浮かべていた。といっても苦笑いになってしまっているのだが。ちなみにアマンからしてみればただただ恐怖しかない。



「はい!創造主様と同じ人間の方々に攻撃が当たらないように細心の注意を払いました!」



 ファーストは自らを生み出したくれた創造主が喜んでいる様子を見て、先ほど人間を攻撃しなかったことは正解だったと知り心底安心していた。が、しかし勿論この昴狂信者であるファーストがその程度であるはずが無かったのだ。



「…ふざけるな!やっぱりお前だったんだな!?私の大切な人達を皆殺しにしたのは!!」



 ちなみに現在ファーストは昴にアマンを殺さない様言いつけられている為、手を出していないだけである。もしそうでなければ確実にアマンはファーストの黄金に包まれ"吸収"されているだろう。



「え…ファーストそれってどういう…」



 そしてそんなことを聞けば勿論昴はこう言う。当たり前だろう、まさか自分が生み出した眷属が知らず知らずの間に人殺しになっているかもしれないのだから。だが創造主こと昴と眷属であるファーストには圧倒的な考え方の誤差があったのである。



「…?エルフは人間では無かったと思いますが…」


「お、おまえさぁ……」



 そう、そうなのである。確かにエルフは正確には人間では無い、まぁほぼ人間と言えるのだが…ファーストからしてみれば命の種別は大きく分けて4種類なのだ。『創造主』「眷属」(創造主と同じ種族である人間)‹その他›…である。だからファーストからしてみればそこらへんの雑草やアリを意図せず踏んでしまった程度の認識しか無かった。



「た、大変申し訳ございません!!知能の低い私には一体何が創造主様をご不快なお気持ちにしてしまったのか分かりません…!至らぬ私をどうか罰して下さい…」



 ファーストは傅いたまま両手広げて昴に捧げるようにしている。これは罰として手のひらに鞭を打って教育をして頂くときの行為だ。かといって現代日本で育った昴にそんな事が分かるはずも無く…取り合えず何かをしなければという強迫観念的な物に迫られ…



「……まぁ誰しも間違いや失敗はあるからね…ドンマイドンマイ」



 ファーストの手をにぎにぎしていた…!


 勿論変なにぎにぎの仕方では無くちょっと握手の延長かな~?といった具合のにぎにぎである。



「そんな、創造主様っ!私のような下賤な輩に触れて頂けるなんて…なんて慈悲深いのでしょうか…!」



 そう…!昴は後輩を褒めて伸ばすタイプの人間である…!と言っても後輩への扱いにこれといって特別な拘りがあるわけでは無いのだが、どうせならほめて伸ばしたいと思っているが為の行為である。つまりは昴自身は特に難しいこと考えず、ミスをした後輩を励ましている感覚なのだが…ファーストからしてみれば自らを作り出した存在、そして心の底から信仰している存在からの"そういう"行動はもはや祝福であり、さらにかけられたその言葉はもはや神託である。

 


「ありがとうございます…!ありがとうございます…!」


「…喜び過ぎでしょう、ファーストさん」



 そんな異常な光景をただ一人異物を見るような目で見ている者がいた。



「こんな…ヤツに、みんな殺されたの…?」



 勿論アマンである。今回は本当にただのとばっちりでこんな状況になっているので最悪である。でも考えてみてほしい、これからとても大切な相手が部屋に来るという時に部屋の中にゴミが散乱していたら大抵の人は…ちゃんと片付けをするだろう。つまりはそういう事なのだ。



「そういえばこのエルフどうしような…俺たちの事言いふらされても…いい気はしないよなぁ」


「目と口を塞いで四肢を切断すれば殺さずに口封じ出来るかと思います」



 ちなみに通常ならば必ずと言っていい程殺しましょうと言うであろうファーストだが、先ほど昴に殺すなと言われている為殺さずに済む方法を提案している。



「え…お前、異層次元戦闘機にでも乗せるつもりなの?」


「異層…?申し訳ございません創造主様の仰る物が何か分かりません…どうか罰を…」


「いやすまん、ちょっと電波がな…気にしないでくれ」



 そんなこんなで眷属に伝わるはずもないネタを振り案の定めんどくさい事になりかけるが段々と扱い方が分かってきたのか昴は適当に返事をしていた。…そんなときアマンが口を開いた。



「もう…私も殺してくれ…私だけ生きてるなんて…惨過ぎる…」


「ではお構いなく」


「えぇ!?ちょま」



 光がアマンを包み込み、一瞬穏やかな顔をしたかと思ったらもうアマンは光の粒子となっていた。



「…ああ…消えちゃった…」



 そして昴はちょっと引く光景を目の当たりにした。



「…何してんのそれ」



 ファーストの身体にアマンだった光の粒子が吸い込まれ…いや吸収されている様に見えるのだ。それはもうスゥ…とファーストの身体に溶け込んでいく。



「はい!先ほどのエルフを吸収しております」


「セル…いやいや、ってことは森を殺った時も…?」



 そう、暗黒森林もファーストによって光の粒子へとバラされている。それは紛れもない事実であり、なんというかそもそも一人のエルフが不幸すぎる目にあった原因でもあるのだ。



「はい!吸収しております!」


「やっぱり吸収すると強くなんの…?てか石とかでも吸収できんだな…」



 昴は思った、それヤバくね?と。そして、昴の問いへの返答は昴の予想を虚しくも超えていた。



「有機物でも無機物でも、それとちょっと難しいですが生物の精神も吸収出来ます!私の権限で意思を持った眷属を作り出すことも可能です!勿論その眷属にも吸収する能力はあるのでご安心ください!」


「バイドなのお前」



 ある程度力を封じた方がいいかもしれない、さもないとこいつが過去とか行って敵として出てきた時やべぇと本気で思った。

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