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転生令嬢の前世は竜王の花嫁  作者: 花咲千之汰
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私とシルヴィー様の二人だけになった部屋の中。


シルヴィー様はソファの上で軽く横になったかと思うとこんな事を話し始めた。


「……少しお前に昔話を聞かせてやろう。とある竜人族の女と人間の男の話だ」


悲しげに目を伏せながら一度軽く息を吸う目の前の彼女。


私はそんな彼女の様子に息を呑みながら、ゆっくりと口を開いた彼女の言葉に耳を傾けた。


「今から三千年程前、とある竜人族の女が世界を見て見たいということを考えてグレゴニア王国を出て世界を旅し始めた。そして、その道中で女は竜になっているところを今は亡き亡国の兵により砲弾を当てられて地面に追突して大怪我を負った。その際に地面に倒れて血を流す竜人族の女をとある人間の男が見付けた。男は傷だらけの竜人族の女を自身の家に連れ帰り、手当を施して女の傷が治るまでそれはそれは優しく接し続けた。その結果、竜人族の女は人間の男に恋をし、男も日々を共に暮らすにつれて女に恋をした。その結果、竜人族の女とその人間の男は誰にも知られることなく番関係を結んだ。だが、やはり人と竜人族の寿命は異なるが故に男はたった数十年で女を残しこの世を去った。女はもう二度と男に会えない事を悲しんだ。しかし、男が死んでから二百年経ったある日に女の目の前にとある一人の少年が現れた。そして、その少年は女が自身の愛した男に渡した宝玉を持っていた。……お前はその少年が何者か分かるか?」


この時、ふと私の頭に浮かんだのは『その少年は恐らく先程の話の中に出て来た竜人族の女性の愛した人間の男性』だろうということ。


私は内心で今目の前のシルヴィー様の話している話の内容が自分自身のようだと思いながら、私はつい先程の自身の回答を目の前のシルヴィー様へと告げた。


「その少年はその竜人族の女性が愛した男性、ですか?」


すると、シルヴィー様は少しだけ間を置いてから私の答えに対して小さく頷いた。


「その通り、その少年は女との番の証である宝玉と記憶を持ったまま再びこの世に生まれ変わった男自身だ。そして、その男と番関係を結んだ竜人族の女とはこの私のことだ」


ここで思わず思い切り目を見開いてしまった私と、そんな私の表情を見てとてつもなく楽しそうに笑うシルヴィー様。


彼女は困惑する私を見ながら両手をパンパンと叩きながら私に対してこう告げた。


「さぁ、ということで私はお前がティリアである事は分かり切っている。何せ私はマイクが私との番の証である宝玉と記憶を持ったまま三回も転生してるのをこの目で見ているからな!」


まるで『どうだ!』と言わんばかりに胸を張りながら目の前で笑う彼女。


私はそんな彼女に対して未だに驚きを隠せずに口を開けまま「え、え?」と言いながら周りを見渡す。


そうすれば、私の目の前にいるシルヴィーさまは更にこんなことを言い始めた。


「まあ今の時代には残っていないが、私が幼い頃からこういった竜人族の者が他種族の者と結婚したらその他種族の者は再び竜人族の番の元に帰って来るという話は昔から存在しているには存在していたんだ。だが、この国の者達は他種族を見下すのが普通だったが故に他種族と交わるなんてことがほぼ無くてこの話を知る者も減ってしまい今やこのことを知ってるのは私だけだ……」


そこでふと目を細めたシルヴィー様はソファーから身体を起こすと、私に対してこんな事を聞いてきた。


「で、話は変わるがお前は今世ではグラオスとどうなりたい?」


私はこてりと目の前で首を傾けるシルヴィー様に対して小さく深呼吸を一つしてから自身の本音を口にした。


「……正直、私はまだグラオスのことを愛しています。しかし、再び結ばれたとしても私は人間であり彼は竜人族で生きる時が違い過ぎます。私は二度も彼を置いて逝って悲しませるなんてことしたくは無いんです」


すると、間を開けずにシルヴィー様がこちらを無表情で見ながら「……なら諦めるか?」と尋ねてきた。


私はそんな彼女の言葉に頷く訳でも否定する訳でもなく口を噤む。


途端にそんな私の様子を見たシルヴィー様は頬を掻きながら私を見てこう続けた。


「私はお前が諦めるなら諦めるでそれでいいし、またグラオスと番たいと言うならばグラオスに事情を説明してお前達の仲を取り持ってやるつもりだ」


「でも、私とグラオスがまた番関係を持ったとしても私はまた彼を……」


「あぁ、置いていくって言いたいんだろ?だが、お前が言った通り竜人族と人間の生きる時は違う。お前達からしての数百年は私達にとってはたったの数十年だ。そんなに気にすることは無い。それに、お前もいつかはマイクのように人生を繰り返すことに嫌気をさしてしまうかもしれない。それでも、まだグラオスのことが好きだと言うならばその時が来るまで私はお前にあいつの傍にいてやって欲しい……」


そっと私の隣にやって来てそう言いながら私の頭を撫でる彼女。


「私は、私は……」


「……そう急いで答えを言わなくてもいいさ。折角また城に来たんだ、お前の気持ちを聞く前に少し一緒に城内散策でもしないか?」


「……はい」


私は立ち上がってこちらに手を差し伸べたシルヴィー様の手を取ると、もう一度「すまんな」と謝って来た彼女に対して首を横に振りながら部屋を出た。




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