街道は馬糞だらけであった
休憩を終わらせて先に進む前に、するべき事がある。
道の両側面の確認だ。
昔の街道は人の流れが多い為に山賊が多く、良く襲われていたと私の記憶が言っている。
独り身の自分などは見つかったらすぐに殺される事、間違い無しである。
新しく増えたスキル危険察知と索敵は切らさないよう進んでいきたい。
後は、逃走経路も一応考えておこう。
備えあれば憂いなしだ。
先程よりは前を杖で確認せずにいける為速くはなったが、それでも私を通り過ぎて行く馬車などにはついていけない。
新しいこの体は、前の体よりは性能は良さそうだが、その程度である。
周りを確認しながらの進行は、かなり気を使う。それにしても、街道の端や道中に馬糞が大量にあるのは頂けない。
臭いもそうだが、蝿などの虫が湧いている場所もある。
どうやらこの世界はあまりそうした衛生観念に乏しいのであろう。
かなり日が暮れて来たので、もう一度休憩する。
体力的にはもう少し行けそうだが、今のうちに野営の準備が必要かも知れない。
取り敢えずは、水分補給だ。
生温い水を少しずつ飲みながら、辺りを確認する。
この辺には野営の跡は無いので危険かも知れない。
もう少し進むしかないか…
さらに進むと野営の跡があった。
しかし、安心しては行けない。
何故なら、山賊の野営跡かも知れないからだ。
辺り100m程を確認してから、燃える物を集め始める。
もうすぐ日が暮れる。
今日はここまでのようだ。
集めた枯れ草や枯れ木で、焚き火の準備をする。
火は生活魔法のトーチでつけた。
一応周りには反応は無かったが、今日は寝るつもりは無い。
寝て死ぬよりは、寝ないで苦しむ方を選ぶ。
火に関しても途中で消すつもりだ。
最悪、他の獣や山賊を集めかねない。
今回はお湯の確保の為だけだ。
軽く食事を終わらせて、お湯を水袋に詰め替える。
暖かいお湯の入った水袋を懐に入れて湯たんぽ代わりにする。
暗闇の中、周りを警戒しながら体を丸めて暖が逃げないようにして朝を待つ。
一応ステータスも確認しておこう。
『名前』
・なし
『ユニークスキル』
・契約書
・異世界言語
『スキル』
・鑑定 Lv1
・生活魔法 Lv1
・アイテムボックス Lv1
・索敵 Lv2
・危険察知 Lv2
・暗視 Lv1(new)
『称号』
・異世界転生者
索敵と危険察知がレベルが上がっている。
暗視が増えているので確認してみるが、確かに夜なのに見やすくなっている。
本来なら詳細などを調べたい所だが、私は熱中してしまうと周りが見えなくなる程没頭するので、このような場所では止めておこう。
どの位時間が経ったのか分からないが、周りはまだ静かなものだ。
危険察知と索敵のレベルが上がった所為か、周りの状況がこんな暗闇でも感覚的に分かってしまう…
急に虫の音が止まった!
静かに伏せて辺りを伺う。
まだ今の所、何も反応は無い。
少しずつ匍匐前進で、野営の場所から移動する。
荷物は既にアイテムボックスの中だ。
じわりじわりと移動していた時、野営をしていた場所に何かが近づくのを感じる!
これが索敵のスキルの効果か! 聞き耳を立てながら、音が出来るだけ出ないように匍匐前進でその場を離れる。
…どうやら人間のようだが、灯りも持たず野営地に近づいてくるのだ。
碌な用ではないだろう。
身を伏せたまま、相手が居なくなるまでこのまま伏せておく。
蛇や虫も嫌だが、野盗なら完全に命が無くなるしな…
暫くすると、野営地に来た人間はその場を離れていく。
私はまだ伏せたままだ。
更に時間が経ってから、ゆっくりと辺りを確認して立ち上がる。
人間が移動した方向を確認し、そちらが北でないことに安堵する。
ふと気がつくと、周りの景色が更によく見えるようになっている。
これなら明け方の状態と殆ど変わらないな。
予定を変更して、このまま町に向かうとする。
かなり疲労が溜まっている。
しかし自分の記憶が正しければ、北の街への距離は最初の位置から30km前後だった筈だ。
かなり遅い進行だったが、それでも20kmは昨日の内に進んでいたはず。
本当なら残り10kmを夜間強行したかったが、あの時は目が見えないから断念した。
生活魔法のウォーターを念じ、顔にかけるようにする。
冷たい水が、意識を少しだけ取り戻させる。
索敵と危険察知は使用中だが、今の所反応は無い。
漸く街の門が見え始める。
どうやら北の街ブランは周りを塀で囲んでいるようだ。
その中に街があるように見える。
明け方の街の門から何台かの馬車が出立しようとしている。
道の脇を歩いて、念願の街にやっと到着だ!
「明け方から街に来るとは夜通しロンデル平原を歩いて来たのか? 無茶をしたな。身分を証明できる物は持っているか? 」
何故か、かなり親切な門番が可哀想な人を見る目で自分を見ている。確かにその通りなので仕方がないのだが…
「旅の途中に、山賊に追われて殆どの荷物を無くしてしまいました。少しならお金があるのですが、身分を証明できる物はありません」
大体、本当の事しか言ってないので問題はないはずだ。門番の人は門の隣にある小屋に俺を連れて行くと拳ほどの宝玉を私に差し出す。
「これは、犯罪者に反応する宝玉だ。称号に犯罪者としての称号があれば光るようになっている。これに触るように」
称号にそれらしきものはなかった筈なので宝玉に触る。
よかった、問題無いようだ。
「街へ入る為に税金を払ってもらう。銀貨五枚だが払えるか? 」
アイテムボックスの中に金貨9枚と銀貨100枚が入っていたのを知っていたので懐から出す真似をして、アイテムボックスから取り出す。
「良し! これで問題なくはいれるぞ。ようこそブランの街へ! 」
門番の元気な声を聞きながら、街の中に入る…早く眠りたい。




