表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヒーローになれなかった私は、勇者でありたいと願う

作者: 四葉咲大翔

無事に就職活動を終え、4月から社会人となれたのはいいものの、このまま毎日働き続け、いつか結婚し、そしてその生涯を終えることはごく普通ですが幸せなことだとも思います。その生活の大部分は同じ事の繰り返しだとも思います、もう少し刺激が欲しいと感じた私は小説を書こうと思いました。(凄く短文ですが)初投稿そして、初めて書く小説で至らない点が多々あると思うのでその点はお手柔らかにして頂ければ幸いです、そっとアドバイスして頂けるともっと幸せです。

 「私」が陸上部に入ったのは、高校生の頃である。

 「私」が陸上部で槍投げに打ち込み全国大会に出場することで有名になりたいと願ったのも、大学でいきなり十種競技をし始め全ての頂点を目指すと心に誓ったのも、陸上が好きだからという理由では決して無かった。

 いやむしろ好きだった「マネージャーの女の子」に振り向いてもらうために何かしらの成果が欲しかった(この大会で優勝したら伝えたいことがあるとか)、そのマネージャーに振られた「私」は、「私」を振ったことを後悔させてやるために、また陸上で有名人になろうと決意とか言ったほうがまだ現実味を帯びている。

 だけど、そのマネージャーを好きになった理由は今でもよく分からないし、ただなんとなく振られることも理性では分かっていた気がする。それでも告白するまで好きでいられたのは、女の子に好きな気持ちを伝えることに対する緊張感、そして周りの友達を巻き込んでしまったからだとも思う。勘違いをしていたのだとつくづく思う―、その子を好きになったのではなくて、恋をして好きな人を作らなければいけないという強迫観念から結果としてその子に告白するという行動に至ったのだと思う。だから、これは恋などではなかった。

 この恋、行動は自分よりも優秀で、自分よりも人生が充実している他の誰かよりももっと優秀になって充実している人生に嫉妬したために生まれてしまった感情。部活終わりに女の子を自転車の後ろに乗せて帰っている同じクラスの子、ベンチに座りこの世界には今二人しかいないという空想さえ疑えないかのように見つめあっているカップル、そして何よりも、クラスの人気者で大抵の女の子から好かれていて、そして文化祭や卒業式の締めに、

「クラスの皆は仲間や、大好き、最高ぉー!」

と高らかに宣言する人に一矢報いるために生まれた感情である。

 私はそんな一時的な負の感情から、そんな人の優秀で充実している人生を否定すべく「マネージャーの女の子」を好きになったと思い込んだのだ。その女の子を好きになったのは容姿、性格が「私」の一定の水準を満たしていて、かつ「私」の好きな人と定義するのに都合の良い人間関係だったのだと振り返る。私は、「マネージャーの女の子」としてしかその子を見ていなくて、その子自身を深く知ろうとはして来なかった。実際話していたのは部活動で顔を合わせる時ぐらいだったのだから。だから「私」は卒業式の日に思いを打ち明けた時、それと同じ理由で振られたのだ。

 愚かにも私は、告白するために部員に協力を申し出た。それが結果としてその女の子に傷を与えることとなる。この結末は私にとって改心するきっかけとなったが、その子にとってはトラウマという軽い言葉では済まされないような、深い負の感情を一時的に背負わせてしまった。悪役の誕生である。

 ヒーローというのは、困っている人がいたらすぐに気が付き、助ける。みんなに笑顔、幸せを与える存在。だけどそれは理想の存在であるとも思う。現実にいるクラスの皆からヒーローなどと慕われている存在は、どうしても人から見えない部分、場所では人気の無い弱い立場にある「私たち」を嘲笑、見えない心のナイフで貶め、一方の自分は大きな群れを作って権力があるように見せて、クラスのほとんどの人からの人気を得たところで、

人に見える場所で少し人の手助けをして称賛されているような人と影が重なる。現実のヒーローは見栄えのいいものを愛し、都合の悪いものに蓋をして、蔑むことでヒーローという名声を保っているような気がしてならなかった。

 そんな人たちを陥れるために私は愛人を作ってリア充したかったのだ。今考えれば真に滑稽な話である。それでは現実のヒーローに一矢報いるどころか結果的に同じことをしているし、おまけにその滑稽な計画で女の子に傷を負わせてしまったのだから、これではただの現実のヒーローに罵倒されるだけの悪役である。

 だけどそんな私でも自身の愚かさに気付くことが出来た、矛盾していると。いくら懺悔しても、女の子の傷が無くなることはないだろう、女の子に負の感情を背負わせたことで人格に影響を与えてしまったのだから。

 罪を償えないのならせめて強い心を持ちたいと願った。また「現実のヒーロー」が現れても、対等に渡り合えるよう、もう二度と蔑まれたストレスから別の人に負の感情を与えることをしないため、そして何よりも本当に相手を好きになることを知るために。

 「私」は皆から慕われる、笑顔を与えられるヒーローにはなれなかったが、それでも罵倒や蔑みを認めたうえで、社会的圧力のような理不尽な事と戦い続けられる、心だけは強い勇者になることが出来るはずだ。批判を承知の上で私は勇者になりたいと願う。心が強くあるのなら、いつかは自分の手の届く範囲の人、家族の笑顔を創れるだから。

 ヒーローになれなかった私は、勇者になろうと決意したのは高校を卒業してからもう少し先の未来である。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ