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コゼツの後悔

 アロアに人形を拾って持っていきました。

 かわいいクルミ割り人形で、きっとアロアに気に入ってもらえるだろうと。

 それはネロからアロアへのクリスマスプレゼントでした。

 ネロは雪の吹きすさぶ中、アロアの部屋の窓をたたいて、人形を差し出すと、すばやく去っていきました。

「アロア、かわいいだろ、これ拾ったんだ」

「まあ、わざわざ届けてくれたの。ありがとう……」

 いつもは金髪をおさげにして、帽子をかぶったアロアは、三つ編みをおろしてストレートにしており、ぽっちゃりした体格がよくわかる寝間着を身につけていました。

「こんな時間にごめんよ、アロア。それじゃあ」

  

 ところが……事件が起こってしまいます。

 

 ネロの立ち去ったあと、コゼツだんなの風車小屋が放火されました。

 村の誰かがネロを見かけたといい、コゼツだんなはネロの首を締め上げ、犯人扱いして村から追い出してしまったのです。

 家賃が払えなくなったネロは、家をも追い出されており、あとに残ったのはパトラッシュだけでした。

 着の身着のままで村をあとにし、アントワープまで歩き、あの大聖堂へ行こうと決めたとき、パトラッシュがほえました。

 パトラッシュがくわえたそれは、コゼツの財布でした。

 二千フランもの大金が入っており、ネロはあわてます。

「たいへんだ、だんなさん、困っているだろうな」

 道を引き返し、アロアの家の戸口をたたいて財布をエリーナに渡すと、

「おばさん、お願いがあるんですが、パトラッシュを宜しくお願いします。僕といても暖かい暖炉もないし、食事ができません。だから……」

「わかったわ、でも」

 エリーナがネロを引き留めようとしますが、ネロは吹雪いてきた雪からパトラッシュを守るようにして扉を閉めました。

 ネロとすれ違って戻ったコゼツは、見つからなかった財布のことで落ち込んでいました。

 村のみんなから預かった大切な二千フランでした。

 それがないとコゼツは、親方でなくなってしまうのです。

 エリーナは財布を見せ、

「ネロです。あの子はあなたからあれだけのひどい仕打ちを受けながら、それでもこうやって……」

「なんということだ」

 コゼツは頭を抱えました。

「なんということだ。私は間違っていた。これは罰だ。ネロに辛く当たってしまった、だからこれは、神からの罰なのだ。ゆるしておくれ、ネロ……」

 

 ネロは雪の中をアントワープまで風に刃向かいながら進んでいきました。

 

 パトラッシュはネロの後を追いたくて、ドアの前で頑張っていると、お客が入ってきてその隙に表へ飛び出しました。

「パトラッシュ!」

 アロアが止める声も聞かず、パトラッシュは勢いをゆるめることなく、突き進みます。


 あの日――おじいさんとネロに初めて出会ったあの日のことを思い出し……。

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