第五幕「はじまり」
燈緤惺は強く強く彼を抱きしめた・・。
燈緤惺「晴明様・・・・・。」
燈緤惺は男の顔を見上げた。
男「・・・・。」
燈緤惺「はっ・・・・・・あなたは・・・」
燈緤惺は気づいた・・。男が晴明ではないことに・・。
バタッ!
燈緤惺は倒れてしまった。
男「お、おいっ!」
男はとっさに倒れてくる彼女を支えた・・。
燈緤惺(あなたは・・・誰なの・・・。)
時とは、流れゆくもの・・
けっして、変えることのできないもの・・
誰にでも、一人では支えきれない思いがある・・
悲しみや切なさや愛・・・。
どうすることもできない死・・
(会いたい・・。会いたいです・・。晴明様・・。)
燈緤惺「ん・・・・・・・・・ここは・・・・?」
?「ここは、神社。桜印神社だ・・。」
燈緤惺「あなたは・・」
燈緤惺の目の前にたっていたのは、さっきの晴明に似た
男であった・・。
ひのえ すい
男「俺は、緋乃柄 翠・・。お前は誰だよ‥。なんで
俺の家の桜のところに」
ひなせ
燈緤惺「私は燈緤惺・・・です。いったいここはっ・・・
晴明様はどうして・・・。」
翠「晴明って、いつの時代の話だよ・・。」
燈緤惺「えっ・・・・・。」
燈緤惺は彼の言ったことに、驚いた。
彼も燈緤惺を見てびっくりしている・・。
確かに、きれいな着物を着ていて、銀髪の長い髪・・・。
まるで、江戸時代の絵巻から出てきたような・・・。美しい姿・・。
燈緤惺「ここは江戸ではないのですか・・?」
翠「江戸って・・・・ここは平成だけど・・・」
(コイツ、なに言ってんだ・・。)
燈緤惺「へ、平成とは・・・・なんで・・」
燈緤惺は本当に驚いた。ここはきっと江戸ではない時代
なのだ・・。もし、江戸であれば燈緤惺は矢で打たれて死んでいた・・・。
翠「とにかく、何なんだ・・。お前は・・・。」
燈緤惺「私は・・・・・」
燈緤惺は翠に自分の起きたことを、全て話した・・。
理解されないかもしれない・・けれどわかってほしかった。
自分の気持ちを・・・
暗い闇の中・・。妖怪たちは今もうごめいている。
?「フフッ・・・・・。やっと来たか、燈緤惺・・。手に入れてみせるぞ・・・。
この世とともに・・・」
桜の光とともに、闇も動き出す・・。
翠惺のように・・・・・。