第十一幕「走りだす」
千「燈緤惺~着れた~?」
隣の部屋から、千の呼ぶ声が聞こえた。
燈緤惺「もっ・・・もう少しです。」
私は涙を拭くと、握っていた服に急いで着替えた。
スゥー・・・
私は襖を開けた。
そこには、目を丸くした翠と千がいた。
燈緤惺「これで、いいのですか・・・・?」
私は照れくさそうに言う。
千「すごく似合ってるよ。」
千はとても嬉しそうな顔で言った。
私は次に翠の顔を見た。
翠「まぁ・・・似合ってる・・・。」
翠もまた、照れくさそうに言った。
千「じゃあ、今日から行こうか。」
千が話を切り出すと、
翠は、
翠「そうだな・・・。授業とかは、受けなくていいから
学校の中にいろよ。」
翠は、千の話をまとめると、立ち上がった。
千「危ないから、絶対外に出ないように。」
千も話を終えると、立ち上がる。
燈緤惺(大丈夫かな・・・・。)
私は、思った。
ただ、学校に行って友達ができるとかではなく、
自分がこのままこの世界にいてよいのか・・・・
彼らに気を使わせる・・・・・・
そんなことが心配だった。
燈緤惺、翠、千は玄関をでて、学校へと、向かった。
照りつける太陽。道を挟む桜たち・・・・
花びらが雪のようにまいちる。
燈緤惺「綺麗・・・・」
燈緤惺は少しいいものをみたような気がした。
照りつける太陽が桜を鏡のように光らせている。
江戸では見れなかった。美しい景色だった。
桜並木を抜けた向こうの道には、
たくさんの人が歩いているのが見えた。
燈緤惺「あっ・・あれは全て妖怪なのですか・・」
私はおどおどした。
なんだって、あんな多くの人が妖怪では
暮らせるにもくらせない。
千「そんなことはないよ・・・。あれは
ほとんどが人だよ。」
千は安心するように言う。
翠「俺たちは、妖怪を倒すために生まれてきた・・妖怪」
翠は、真剣な顔で向こうをみて言った。
燈緤惺(妖怪・・・・)
認めたくないのだろう・・・・。
自分たちが、妖怪であることに・・・・
キーンコーン
学校の鐘がなる・・・。
翠「遅れるから行くぞ・・・」
翠は、走り出した。
それに続き、私と千もだす。