表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/32

第7話 〜契約と伯爵と水晶と〜

今回は3つの視点でお送り致します

アーセルインが「そのこと」を言った瞬間、空間が、凍結した。

「・・・どういうこと、でしょうか?」

それでもエリスは笑みを崩さなかった。

「『所有者マスター』であるのに『洗礼者リィルシアーズ』ではない。

これは大きな矛盾が有ります。」

「・・・その矛盾とは?」

エリスは固くなった声で聞いた。

そのことにアーセルインは眉を潜めながらも答えた。

「・・・これは国家機密ですが・・・、いずれ知るのでしょうし・・・。

【『所有者マスター』である条件は『洗礼者リィルシアーズ』である者でならなければならない。】

これが書を保有する『所有者マスター』の暗黙の掟です。

そして、先ほどの質問とは関係ありませんが、あなたはその書といつ『契約コントラクト』を結んだのですか?」

アーセルインは国家機密である筈の事をいとも簡単に話した。

しかし、その対価とばかりにアーセルインはエリスへと質問を投げかけた。

「そうですか・・・。

・・・・ああ、わたくしとハイラルディスの契約コントラクトですね。

ハイラルディスからは、わたくしと契約コントラクトを結んでいます。

しかしながら、わたくしからハイラルディスへは契約コントラクトを結んでおりません。」

そのエリスの答えに、アーセルインの眼光が鋭くなった。

「『一方契約アクセレンコントラクス』、ですか。

それはまた・・・。

どうして貴女からの契約コントラクトをを拒んだのですか?」

契約とは、精霊達との契約は精霊からの『一方契約アクセレンコトンラクス』はできるが、人間からはできない。

ごくまれに、『稀少的魔法レアスキル』である『強制執行』用いて行われる事が有るが、この『稀少的魔法レアスキル』を使える者は宮廷内でも極少数である。

エリスはアーセルインからの問いに、少しだけため息をついてから答えた。

「わたくしに『妖精のアナザーフェアリー』はもうあまり必要がないのですよ。

例外も居ますけれど・・・・わたくしにハイラルディスは過ぎたる者なのです。」

エリスの答えに、アーセルインは少し意外そうな顔をした。

「本当に・・それだけなのですか?」

「・・・っ、ええ、それだけです。

貴方様も暇ではないのでしょう、早くお帰り下さい。」

エリスは早口で言い、アーセルインの胸を押した。

「・・・はい、又来ますね。」

アーセルインは少し悲しそうな顔をしたが、追い返そうと必死のエリスは気付かなかった。

そして、アーセルインは部屋から去っていった・・・。



再び一人になったエリスは扉の前に座り、消えそうな声で呟いた。

「・・・私が何故、彼と『契約コントラクト』しないか、なんて・・・。

答えは出ている、けれどね、信じきれないんだよ、明確な答えなんて無い。

ごめんなさい・・・・、ハイラルディス・・・。」


     ____主、遅くなりそうだ・・・。

         ・・・だが、必ず行く故に・・・・。_____

エリスは『誰か』に応えない。

答えを、出せてはいないから・・・。

そして、エリスは何かに意識を引っ張られ、眠りについた・・・。








「・・・ここは?」

そこは白く、何も無いところだった。

「ごめんなさい、少し荒っぽい喚び方をしてしまったわ。」

誰かの声が木霊する。

「だ、れ・・・?」

エリスの声は、かすれていた。

「初めまして、わたくしの同位体のお人。

・・えっと、名前は・・・・。」

ふわり、と桃髪のエリスより年下に見える少女はどこからともなく降りてきた。

「エリスです。」

何故かエリスは敬語を使っていた。

その様子に少女はふふふ、と笑いながら言った。

「そんなに畏まらなくても結構よ。

わたくしはこれが素なの。

・・・気分を悪くされたかしら?」

少女はシュン、となりながら言うので、エリスはブンブンと首を横に振った。

「そんなことないわよ!

・・・どうして私をここへ導いたの?」

「・・・あの子、ハイラルディスについて、よ。」

少女は一転して真剣な表情へとなった。

「あの子はね、『そちら』の世界には属さない子だって言うのはわかっているかしら?」

少女の問いに、エリスは首を縦に振った。

「一応、『異端』という形で存在しているみたいだけど、もうすぐ限界が来ちゃうわ。

あの子は『わたくし』と『貴女エリス』を間違っているみたいだわ。

・・・それは知っているかしら?」

「・・・知って、いました。

ですが・・・。」

エリスは歯切れ悪く、うつむいて言った。

まるで、その先を言う事を拒むかのように・・。

「エリス、貴女は気付いていないようだったけれど、ハイラルディスはとうの昔に『違う存在』である事に気付いていたみたいだったわ。」

エリスは少女の答えにうつむいた顔を勢い良く上げた。

「それをどう捉えるかは貴女次第よ、エリス。」

少女がそう言った瞬間、誰かが何かを言っているのが聞こえた。

「・・・もう、時間みたいだわ。

次会う時に答えを貰うわ。

その時までに対価を用意できていれば良いけれど・・・。」

少女は焦っていった為、最後のいらないところまで言ってしまったようだ。

「え・・・。」

「ごめんなさい、又喚ぶわ。」

そして少女は魔法を発動させようとした。

エリスは焦って少女へと問いを投げかけた。

「待って、どうすれば貴女に会えるの!?」

少女は一人で話を進めて、肝心の方法を話していなかった事に気付いた。

「ああ、それはね・・・・。」

もう魔法が発動していて、何を言っていたかはほとんど聞き取れなかったけれど、口の動きでエリスは分かった。


___貴女がわたくしを必要とした時、よ・・・・。____















「・・・ん。」

ミリファはスッキリとした気分で目が覚めた。

「もう朝なのねぇ・・・。

のんびりとした口調でミリファは言った。

「そういえば・・・、昨日のこと・・・。

夢では、無かったのね・・・。」

ミリファは天蓋付きのうす桃色のベッドからのっそりと出た。

「あ、占い・・・。」

ミリファはボーっとした頭で呟くと、おもむろに杖を取り出した。

占いはミリファのちょっとした日課である。

『占い』とは、ミリファの固有技能だが、運勢を占う占い師の占いよりよっぽどあたる占いの事である。

「う〜ん、今日は・・・・。」

ミリファはおもむろに真っ白なカードを何も無い空間から取り出した。

「・・・?」

ミリファは首を傾げた。

いつもならそれに運勢が書かれている筈だからだ。

しかし、そのカードには・・


『火と光の現れし時。

 アメーラの子ら、戸惑うだろう。

 灰は光の姫の眩しさを知る。』


いつもと違う風な、予言のような物が書かれていた。

しかしながら、ミリファがそれを読み終えると、カードは直ぐに消えた。

カードが消える事は無いのだが、今回は例外中の例外だろう、とミリファは納得し、その事に脱力したため、ベッドへ腰掛けた。


その後、ノックの音がした。

「ミリファ様、朝でございます。

・・・開けますよ。」

そして入って来たのはカナリアだった。

「あら、起きていらっしゃったのですね。

おはようございます、ミリファ様。」

ミリファは妹につられて基本早起きなため、カナリアが来るよりも前に起きてしまった。

「おはようございます、カナリアさん。」

「わたくしにさん付けは必要有りません。

唯、一介の侍女に過ぎませんから。」

カナリアは謙遜しながら言うと、後ろに持っていたワゴンを前へと持ってきた。

「朝食でございます。」

そして、ほぼ強制的に椅子に座らされ、渋々ミリファは朝食を食べていた。

ミリファは居心地の悪さを感じていた。

食べている間、カナリアは壁についているからだ。

侍女ならばそれが普通なのだが、それになれていないミリファは居心地が悪かった。

「・・・。」

食事中は、二人とも無言だった。

ミリファは食事が終わり、ふと思った事を聞いた。

「あの、今日は何か予定がありますか?」

「敬語でなくてもよろしいですよ。

・・・今日はレゼンエーリィ伯爵家との顔合わせとその後、ゼイテランズ神爵様のご令嬢であるエーリラ=メンダル=ラ=ゼイテランズ様とのご挨拶から始まり、その他名家へのご挨拶で今日は終わりです。」

・・・ミリファは聞いただけで気が重くなっていた。

いっそのこと、聞かなければ・・・、と思っていたが、どうせ言われるのだから、とミリファは無理矢理納得した。

「は、はい・・そうですか・・・。」

ミリファは明らかに気落ちした顔をした。

そんなミリファをフォローするようにカナリアは言った。

「・・、ミリファ様、レゼンエーリィ伯爵家とゼイテランズ神爵様ご令嬢、一番最後の名家などの方々とは面識が有るかと思われますよ。」

ミリファはその言葉に、パッと表情を明るくさせた。

「誰!?」

「さあ、誰でしょうか?」

カナリアはニコリと笑い、ごまかした。

「うー、誰なの〜。」

ミリファは教えて〜、と言っていたが、カナリアは突然、服を取り出した。

・・空間からだったので、魔法だと考えられる。

「さあさ、お着替えなさいませ。」

カナリアは笑顔でドレス(敵)を持って迫ってきた。

「あう〜〜〜、助けて〜〜〜〜〜!」

ミリファの叫び声が部屋中に木霊した。







「はぅ・・・。」

ミリファは紫紺のドレスを着ていた。

紫紺のドレスを着たミリファは少し大人っぽく見えた。

「お似合いでございますよ、ミリファ様。

・・・・もうすぐですね。」

「そんなの社交辞令でしょう・・・。

なにがもうす・・・・。」

ミリファが質問しかけた瞬間、ドアがノックされた。

「レゼンエーリィ伯爵家現当主、ルーゼン=ラメア=ラ=レゼンエーリィです。」

それは男の人の声だった。

「は、はい、どうぞ・・・。」

ミリファは恐縮しながらも返事をした。

そして、レゼンエーリィ伯爵家現当主のルーゼンが入ってくると、カナリアはミリファの後ろへ回り、お辞儀をした。

「ああ、そんなに固くならなくても結構ですよ、カナリア。」

と、レゼンエーリィ伯爵家現当主、ルーゼンは言った。

しかし、カナリアは何も言わなかった。

「まあ、仕方有りませんね。

・・・昨日ぶりでございます、ミリファ様。」

そう言われ、ミリファはレゼンエーリィ伯爵家現当主、ルーゼンをよく見た。

髪を束ねていたので分からなかったが、昨日の黒髪で長髪の騎士であった。

「あ!・・・一日ぶりです。

ところで・・・。」

ミリファは気になっていた事を聞こうとしたが、その言葉は遮られた。

「聞きたい事は分かっております。

・・ミリファ様の妹君、エリス様の事ですね?」

ミリファは聞きたかった事を言い当てられ、感心した。

しかし、疑問も浮かぶ。

「どうしてその事だと?

わたくしはほかの事を聞きたかったのかもしれませんよ。」

ルーゼンを試すようにミリファは言った。

「あなた様の性格上、エリス様のことを置いて、ほかの事を聞くのはあり得ないでしょう。」

ルーゼンはきっぱりと言った。

「・・わたくしの事をお知りなのですか?」

ミリファとルーゼンは、ミリファの知る限り、対面した事は無かったのである。

「っ、いえ・・・・。

・・・・、・・・・・・・。」

ルーゼンはその問いに、ポーカーフェイスを崩し、少し焦った表情をした。

しかしながら、それは一瞬の事で、ミリファは気付かなかった。

そして、最後にルーゼンが何か言ったが、ミリファには何も聞こえなかった。

「?何か言いましたか。」

「・・・いえ、何も。」

ルーゼンは少し迷った顔をしながらも言った。

ミリファは席に着いた。

しかし、ルーゼンが立ったままであったため、ミリファに見えないようにカナリアは視線で促した。

カナリアの視線に気付いたルーゼンは少し苦笑いしてから座った。

ルーゼンが座ったのを確認すると、ミリファはカナリアがいつの間にか用意した紅茶を飲んだ。

とりあえずこの空気に耐えられなかったのである。

「・・・・あ、あの・・・。

エリス、は・・・・どう、し・・・・・・・。」

ミリファは上手く呂律ろれつが回らなかった。

ミリファがそれに気付いた瞬間、ミリファの視界は闇に閉ざされた。

そこに居た人間は気付かなかったが、誰かが鋭い視線でミリファを見ていた・・・。




















「・・・行きましたわ。

もう出てきても結構ですわ、お兄様。」

白く殺風景な部屋に少女は居た。

少女は一人だった。

「・・・うん、そうだね。

同位体の子と君を間違えるなんて・・・。

彼も切羽詰まっていたとはいえ、眷属ながら情けないよ。」

少女が呼び、青年が出てきた。

青年は頭おさえながら言っていた。

「それほどまでに、『彼女』と『君』は似ているのかい?」

青年の問いに、少女は首を振った。

「わたくしと『彼女』では存在理由と存在が同じなだけですわ。

ご覧になればよくお分かりになると思いますわ。

・・・はい。」

少女は虚空から綺麗な透明の水晶を取り出し、青年へ見せた。

そこには少しくすんだ水色の髪の苦労をしていそうな少女と、緑色で短髪の短気そうな青年が居た。

「・・・・成る程ね、彼が間違える訳だ。

けれどもう分かっているんじゃないかな、彼も。」

「ええ、分かっているわ、彼は。」

「じゃあ・・・。」

「もうすぐ、よ・・・・。」

少女は意味不明な会話を交わした後、目を伏せた。

「もうすぐ、等価交換エクスチェンジングが始まるわ・・・・。」





かなり遅れてしまいました。

今回以降、かなり遅くなると思いますが、気長にお待ち下さいませ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誤字脱字等ありますが、ご了承下さい。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ