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第5話 〜失踪と少女と……?〜

今回は3つの場所でお送り致します。

第5話


 ケルフェリズ王国の朝が訪れた。

「ん〜〜、よく寝たぁ〜」

「……」

 エリスの寝起きは良い方だが、ハイラルディスの寝起きは最悪である。

「おはよう、ハイラ」

「……おはよう、……マスター」

 エリスが挨拶をすれば、一応はまともに返してくれる。

 というより、エリス以外が話しかけるととんでもないこととなるのはそのうち分かるであろう。

 そしてその数分後、時を見計らったかのようにドアが開けられた。

「今から謁見だ。

……付いてこい」

 昨日の偉そうな文官だった。

 文官は口早に伝えると、一方的に歩き出したのである。

 そんなに関わりたくないのだろうか?と思うとエリスは少しショックであった。

 そのまま不機嫌なハイラルディスと少しショックを受けているエリス、更には無口な文官という混沌カオスな三人であった……。







 謁見の間と上にケルフェリズ語で書かれた文字盤をみて、エリスはほっとした。

 やっとついたのか、と。

 エリスがケルフェリズ語が読めるのも、とりあえずいろいろなことが有ったとだけ言っておこう。

「ここだ」

 言われなくても分かってる、とエリスは言いたくなったが、そこはごまかすために言わなかった。

 文官はドアをノックして言った。

「文官、アルザ=メンデス=レインノワーツです。

先日の罪人二人を連れて参りました」

「入れ」

 そういったのは若い男の声だった。

「ハッ。

……早く入れ」

 エリス達は偉そうな文官、もといアルザに促されて中へ入った。

 エリスは一応、礼儀は心得ていたので王の前へ行き、膝を折った。

 ……いや、正確には折ろうとした。

 その前に、エリスは国王の目を見て言った。

 何とも恐れ多い行為で有ったのだろうか?

「貴様!!王に向かってそれは、」

 王の近くに居た騎士は叱責しようとしたが、エリスがその言葉に割って入って告げた。

「分かっています。

しかしながら王よ、こちらにも質問が有るのです。

そちらも聞かれるのでしょうし、等価交換だと思われますが?」

 エリスはそんな言葉に噛むこと無くスラスラと述べた。

「貴様、自分の立場が分かって者を申しておるのか!!」

 やはり王は激怒した。いや、しない方がおかしいであろうが。

 その横に居た一番左の多分王子であろう者が王を宥めるように言った。

「まあまあ、父様。

要求を飲まなくてあちらに居る先日暴れた方にここで暴れられたらどうなさるおつもりですか?」

 それは正論であった。

 王よりも王子だろう者の方が賢いと言えるのではないのであろうか?とエリスは思ってしまった。

 それにしてもどこかで聞いたことがある声なのよねーと思いながらもエリスは返事を待った。

「仕方有るまい、申してみよ」

「はい、ありがとうございます。

わたくしからの質問は二つ。

まず、一つ目はこの者……、ハイラルディスの封印を解いた者について、です」

「封印じゃと?」

 王は初耳だ、という顔をした。

「え、お気付きではなかったのですか?」

 エリスは知らなかったことに少なからず驚いた。

 しかし、その事については先ほどの王子だろう者が意見を述べた。

「いいえ、心当たりはあります。

ハイラルディス……、というのかは分かりませんでしたが、この国の国庫には『妖精のアナザーフェアリー』の一つの『破壊と災いの書』と呼ばれる書が保管されておりました。

その書は破壊のを繰り返すために、その書を持った『所有者マスター』が危険との事で国を挙げて封印しようとしましたが失敗に終わり、封印するのはあきらめられました。

ですが、その約半年経った時、何者かに封印され、その書は幕を閉じたと聞きます。

書の特性は破壊、火炎系の魔法剣、これは未確認なのですが…………寝起きは不機嫌、とか……」

 ズルッとエリス以外の皆がこけそうになった瞬間であった。

 そしてエリスはというと、呆気にとられた表情をしていた。

 しかし、これは言った本人も恥ずかしかったのか、顔を赤らめている。

「やっぱりこれは忘れてください!!」

 一番左の王子はやはり自分の発言を訂正した。

「いえ、合っています。

現にハイラは機嫌が悪いですから」

 エリスはそれが本当である事を証言した。

 でも……。とエリスはその事を知っている事に疑問を持った。

 その事をポロリと言ってしまったのは、『彼』ぐらいだろうと考えていたエリスであったが、先ほどから感じていた違和感とそれは繋がった。

(あ……、そう言う事だったんだ……。

道理で、懐かしい)

「そちが、その書だと申すのか!?」

 王はハイラルディスを見て、とても驚愕した顔をした。

「ええ、ハイラルディスがあの書です。

……信じてもらわれなくても結構ですが。

ここからはわたくしの戯言たわむれごとだとでも思われて聞いてください。

ハイラルディスの封印が解けた、という事はすなわち国に反乱が起きるでしょう。

それがハイラルディスの眠りを妨げた貴方達の国に起きる代償です」

 エリスはエリス自身がビックリするほど淡々と告げた。

「な!!

さてはお主が反乱を目論んでいるのではないだろうな?」

 エリスをいぶかしげな目で王は見た。

「わたくしはそんな面倒な事致しません。

それにわざわざ疑われるような事は言いませんし。

大体、そちらがハイラルディスの眠りを妨げたりするからこんなことになったのです」

「一体どういう事でしょうか?」

 一番左の王子はエリスに丁寧に言いながら聞いてくる。

「……ハイラルディスは災いの書、でした。

この国の人々の負を吸い取っていたのはハイラルディスです。

ですから、反乱のような大きい事は起きませんでしたでしょう?」

 エリスは『災いの書』と言うところを小さく、遠慮がちに言った。

 そのエリスの言葉に、そこに居た人間は一様に頷いた。

「とりあえずこの話はここで区切らせていただきます。

次は————」

「大変です!!」

 兵士が扉ごしに言う。

 扉越しでも本当に大変だと分かる程、兵士の声は焦っていた。

「どうした。」

 アルザは至って冷静な声で聞いた。

「そ、それが……。

レイネラ=クレーシャ=ド=ケルフェリズ王女様が誘拐されました!!」

 その声が、謁見の間中に響いた……。

 やはり、姉が姉なら妹も妹であった。



















 センブルク帝国ではもうすぐ昼になる頃の朝、騒動は起きた。

「ちょっと、何があったの!?」

 ミリファは兵士に今にも掴み掛かりそうな勢いで問いを投げかけた。

「……落ち着いてください。

私はエリス、様のお迎えのために行っていた者です。

国王様、状況をご報告致します。

エリス様は先日、我が弟が来て以来、誰も見ていないそうなのです。

エリス様の生活用品はすっかりなくなっていたため、家出したものと考え、探知魔法ソナーで探しましたが、見つかりませんでした。

更に気配探知魔法ソナー・ディリフィングでは<アルマテル>町を出た後、行方が分からないそうなので、誘拐と見て捜査していますが、相手が転移魔法テレポートを使ったのか、近域にはおらず、あの辺りは国境近くなので隣国へ連れ去られたものと思われます」

 それを聞いた瞬間、ミリファの顔が真っ青になった。

「ミリファ様!?」

 そのことにいち早く気付いたカナリアは急いで咄嗟にミリファの名前を呼び、駆け寄った。

「え、この方がミリファ様ですか!?

エリスとは似ても似つかな……あ、お気にになさらず」

 黒髪で長髪の騎士はミリファを見て吃驚した。

 しかし、エリスを知っているような口ぶりをしたのが気になるところだ。

 それをミリファが聞こう(問いつめよう)とした時。


——咎人達に雪の祝福あれ。

   

  雪の加護を忘れる事なかれ。

  

  雪の姫君を忘れる事なかれ——


 歌が、謁見の間に響いた。

 それはとても綺麗なソプラノ声で歌われた綺麗な歌であった。

「誰だ!?」

 その場に居た騎士は声が聞こえた方、大理石の柱を囲んだ。

「あらら、そんなに身構えなくてもいいのにー。

それに、私はマスターを探しにきただけなのになぁ……」

 そう言って柱の陰から出てきたのは幼い少女。

 その少女は淡いレモン色でウェーブのかかった髪を上で一つにまとめた、とても子供っぽい雰囲気の少女であった。

 その少女はいつの間にかミリファの目の前に居た。

「ミリファ様!?」

 これは本日二回目のカナリアの叫びだ。

 先ほどとは違う意味合いではあるが、心配しているには変わりない。

「あなた……マスターに似てる?

マスター、は貴方の盾。

いいえ、違うの。

貴女はマスターの盾。

違えてはいけないよ?

忘れ時の竜を呼び起こすから、ね……」

「貴様、自分の状況を分かっているのか!?」

 少女はその問いに、う〜んと頭をひねらせた。

「……敢えて言うならぁ〜貴方達こそ自分の状況を分かってる?」

 そう言われて数人の騎士が冗談だろう、と周りを見渡した。

 その中で、上を向いた騎士はビックリした表情を見せた。

「あれは、何だ?」

 そう呟いたのは誰だったのか。

 それは誰にも分からない。

 しかしながら、上にあったものとは。

「あぁ、やっと気付いてくれたのぉ?

天井の『氷河アイシングレイン』にぃー。

まったく、気付かれないかと思っちゃったよぉ〜。

気付かなかったらまあ……串刺しにちゃってたけど、ねぇ」

 にぱー、と笑顔で少女は告げた。

 『氷河』とは、水の中位魔法であり、上から氷を降らす魔法である。

 防げればそんなに怖くはない魔法だが、少女の『氷河』は普通の倍以上ある。

「ねえねえ、貴方達。

雪の加護を覚えている?」

 周りは疑問の表情を浮かべた。

 その事に少女は苦笑いしながら言った。

「だめだよぉ〜、忘れないでって、約束を違えないでって言ったのになぁ……」

「約束を違えないで」というところにカナリアは反応した。

「まさか、貴女は、貴女様は、……『運命の姫』様でいらっしゃいますか?」

 そのことに少女は意外そうな顔をした。

「まだぁ、覚えてたんだぁ。

そっか、一応生かす価値はあるみたいだねぇ〜。

そうそう、私が『運命の姫』様だと言う問いに関してはねぇ……。

一応、『はい』かなぁ?」

 少女はいたずらな笑みを見せた。

 絶対に遊ばれている、とミリファは確信した。

「そうでありますか。

大変ご無礼を致しました、『運命の姫』様」

 カナリアは頭を下げた。

 周囲も習って頭を下げようとした、その時……。

「……え?

貴女、何?」

 ミリファが突然言葉を発した。そして、唐突な疑問を少女へ投げかけている。

「だーかーらぁ〜、私はぁ〜貴方達の言う『運命の姫』だよぉ?」

 ミリファはその答えに首を振った。

「……違う?

皆そう言ってるもの。

この人はマリエ、きゃあ!!」

 ミリファは端から見れば独り言を言っているように見えた。

 その独り言に少女は反応し、何かをミリファが言おうとすると、ミリファの目の前に大きな氷が落ちてきた。

 その後の少女の表情は先ほどの笑顔とはうって変わって、無表情であった。

「そう、分かる人が居た。

ならば私がこうする必要も無かった。

まさか、貴女がマスターの壁害になる人だとは思いもよらなかったわ。

……気をつけなさい」

 そう告げた少女の声はとても冷徹な声だった。

 ミリファは吃驚した表情で少女を疑視した。

 何も思い当たる節はなかったから。

「早く思い出すといい。

手遅れになる前に」

 少女は幾分かためらって告げた。

 そう告げた少女の声音は少し悲しそうだった。

「『マリエラの花の名を持って、我は告げる。

はためけ、逆巻け、鳴らせ。

 花の氷河マリエラ・アイシング・デュエット』」

 少女がそう唱えると、マリエラの花の黄色く小さい花びらが少女を埋め尽くした。

「さようなら、あの人の娘と雪の末裔達……」

 少女は花の中から少しだけのぞいた目で最初にミリファをみると、王達を見て言い放つと、少女は完全に花に埋め尽くされた。

 その瞬間、広い筈の謁見の間も花に埋め尽くされ、ミリファの視界は閉ざされた。

「——はやく、はやく……——」

 そう言った、誰かの声がミリファには聞こえた気がした。

 そして花は音も無く去る。

 そして、そこには花など無かったかのように、何も無かった。

「あれは、誰…………?」

 ミリファの声が謁見の間中に木霊した。















「まさかアメーラの子がいるとおもわなかったわ」

「そうか、しかし居る事は分かっていた事故、いた仕方あるまい」

 女性と男性、それ以外にその空間は何も無かった。

「早く、見つけないと。

貴女も急ぎなさいよ?」

 女性は男性を急かした。

「我が探すつもりは無い」

「どうして?

あの方を彼奴あいつは見つけたみたい」

「故に必要なし」

「だからどうしてなの?」

「あやつが見つけた故、我が見つける必要は無い」

「あなた居場所が分からないかしら?

彼奴の気配は分かりにくいもの」

 女性は少し不機嫌に言った。

「我は気配を読むのに長けているが、探す気はさらさらない」

「そういえば……。」

 女性はハッとした表情をしていった。

「なら、貴男がちゃんと探せば見つかったと思うけれど?」

「否、我はあの方が察知させない限り、見つける事は不可なり」

「……そう。

使い勝手が悪いわね」

 女性の言葉に男性はムッ、と声を出したが、それでもなお、男性は無表情であった。

「時が、終わるな」

「そう、もうすぐ時は終わるわ。

——安寧の、時が……——」

 女性と男性は、悲しそうに目を細めて遠くを見つめていた。

今回は三カ所でしたが、どうでしょうか?



誤字脱字・感想等もらえるとうれしいです。

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