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第15話 〜会談〜

 ――王妃様は眠っています。

   何時になれば王妃様は起きるのでしょうか?

   ずーっと、ずーっと眠っています。

   彼を助けた王妃様の役目は終わりです。

   どうか、安らかに眠ってください。

   覚めることのない眠りを、貴女に……。

   わたくしはそう、『書』に願いました。







「駄目、待って!!」

 エリスはガバッと身を起こした。

「……え? あれは、誰の……」

「あ、起きたのか。 おはよう」

 エリスが考えようとした矢先、ハイラルディスは挨拶をした。

「……ハイラ、『所持者マスター』と『書』は繋がっているのよね?」

「は? そうだが、それがどうかしたか?」

「ううん、なんでもない……」

 エリスは首をかしげた。

「記憶? そうであれば……」

「マスター、時間大丈夫か?」

 ハイラルディスに促され、時計を見ると、朝食の時間であった。

「わわ、いそがなきゃー!!」

 エリスは金色の書を持ち、その場を立ち去った。




――お寝坊なところも治られていないご様子で――

「う、うるさいわよ、ルイ!!」

 エリスは発言した後に、廊下には誰もいない事を確認してホッと息をついた。

「こんなところで一人喋ってたら、私が変人みたいじゃない……」

「そうですね」

「でしょ、あなたもそうおも……」

 バッとエリスは後ろを振り向いた。

 そこに居たのはアーセルインであった。

 エリスは冷や汗をかきながらアーセルインを見る。

「ア、アーセルイン様。

ご機嫌麗しゅうございます〜」

 即席で作った作り笑顔を見せる。

「はい。 ご機嫌麗しゅう、フィオルセッテさん」

 アーセルインはそれはもう素敵な笑顔を見せた。

「ところで、今から面会が入ってしまったのですが……、ちょうどいいです」

 何が、とエリスが尋ねようとしたところでエリスは口ごもった。

「ま、まさか……?」

 ダラダラとまたも冷や汗を掻きながらエリスはアーセルインと目を合わせない。

「御察しの通りですよ。

貴女をその面会の付き人にしようと思っていたのです」

「ご、ご冗談を!!

わたくしにそんな能力はございません。

付き人にするのならば、もっと会談能力のある方を……」

 しかし、焦るエリスの言葉は遮られた。

 誰に? ……アーセルインに。

「ああ、もうこんな時間です。

……行きましょう」

 アーセルインは強引にエリスを引っ張ってゆく。

 ……とても良い笑顔で。

「やーですーー!」

 誰もいない廊下にエリスの声が響いた……。





 エリスはとある部屋に居た。

 しかも、朝ご飯を食べ損ねたので少々機嫌が悪い。

「そんな不機嫌そうな顔をしないで下さい。

もうすぐ……」

 不機嫌になったのは誰の所為だ、と思いながらエリスはアーセルインを横目で見る。

 その瞬間、扉が開いた。

 見ると、アーセルインに似ているようで似ていない雰囲気を持った青年が居た。

「やあ、久しぶり。

元気してたかな、弟よ」

 青年はアーセルインをからかう様な口調で言った。

 一方、アーセルインは緊張している様に見える。

「元気でしたよ……兄様。

2年ぶり、でしょうか?」

「ぶっぶー、3年ぶりだよー。

そんなことも忘れたの?」

 どちらが年上だ、とエリスは突っ込みたくなったが、そこは我慢をした。

「それは……」

 アーセルインがいいにくそうにしていた為、急遽エリスが助け舟を出した。

「今回の面会の理由は私的なお話でございましたか?」

 エリスのすこしきつい物言いをする。

 エリスに注目した青年は、少しびっくりしたような表情をする。

 その後、真剣な表情で青年はアーセルインを見つめた。

「実はね、話があるんだ。

それは……」

 アーセルインはゴクリ、とつばを飲み込む。

「君のお見合いだよ!」

「は?」

「いやー、こんな兄を持っていて君は幸せ者だね。

丁度今時期にセンブルクの姫君が見つかったらしくて、僕が王子だと言ってから姫君のお相手を是非この国の第3王子に!ってゴリ押ししたら直ぐにOKしてくれてね〜」

 戸惑っているアーセルインとは裏腹に、青年はペラペラと喋り始める。

「……考えさせて頂いても?」

「うん。 

僕からの用はそれだけ、じゃあね。

……いい返事を、期待してるよ」

 それだけを言うと、青年は立ち去ろうとした。

「……あ、そこのメイド貸してもらうよ〜」

 そう言い、青年はエリスを引っ張っていった。

「え、まってくださ……、アーセルイン様ぁ〜!!」

 アーセルインはエリスの叫びに笑顔で手を振るだけであった。

 ……御愁傷様。






「……で、どうして君がここに居るのかな?」

「何のお話でございましょうか?」

 ジリジリと、エリスは青年に迫られる。

 エリスはそれに合わせて後ろに下がった。

「……君、名前は?」

「フィ、フィオルセッテ=グランジェルノでございますよ?」

「ふぅん、グランジェルノ、ねぇ……」

 青年は少し考える素振りを見せた。

「フィオルセッテ……あ」

 青年は何かに気付いたかの様に声を上げる。

「オルセ、の部分。

一音づつずらしていくとエリス、になるよね?」

 青年は悪戯な笑みを浮かべながら言った。

「それにね、これを合わせるとエリス=グランジェルノ。

つまり、君はエリス=グランジェルノ=ド」

「それ以上は駄目ですっ!」

 エリスは慌てて青年の口を塞ぎ、周りをキョロキョロとする。

「ぷはぁっ。 君がこちら、ってことは……『彼女』があちらに居るんだね。

だから止めたのに。 彼女は警告を聞かなかった……」

「違います!」

 エリスは自分でもびっくりするぐらいに声を荒げた。

「……違うんです、あの人は貴男の警告を無視した訳ではないのです。

唯、気付かなかっただけなのです!!」

「意味は同じだよ。

どちらにせよ、彼女はアチラをとっただろう?」

 エリスは反論する言葉が見つからなくて唇を噛み、うつむいた。

「それに、僕は彼女に言ったよ。

『ここを選べば後悔する』と。

……僕にしては分かりやすい説明だろう?」

「っもう! だから私は貴男が苦手なのです!!」

「うん、褒め言葉として受け取っておくよ」

 ……彼は実に喰えない青年であった。

「用は済みましたでしょう?

わたくしは退出させて頂きます。

さようなら、……ハヴェリド様」

 半ば強引にエリスは言う。

 ドアを乱暴にあけ、エリスは退出していった。

「……やっぱりからかい甲斐があるね。

センブルクの姫君はてっきり君だと思っていたんだけれど。

まさか姉の方だったとは。

誤算だったよ、せっかく苦渋の決断をしたって言うのに。

まぁ、その方が良いか。 彼女を彼にとられなくて済む。

けど、彼女の『書』が黙っていない、か……。

何にせよ、壁は多いね」

 青年は独り、ため息をついた。

 憂いを帯びた表情の青年は、椅子から立つ。

「さ、仕方ないね。

僕も彼女を口説くことに専念しようかな。

けど、——ハヴェリド=フェル=ド=ケルフェリズの名に於いて、彼女は必ず守るよ。

必ず、ね」

 ハヴェリドはそう宣言した後、薄く笑みを浮かべた。

 その瞳は、獲物を見つけた獣の様にも見えた。

短編書いているので更新がとても遅くなりそうです。

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