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第14話 〜学園〜

引き続きミリファ側です

「どうしたのかなぁ、二人とも。

……来ないみたいだから、先に行くべきかしら?」

 ミリファが校門前でうーんと唸っていると、ミリファの後ろに陰が出来た。

「あ、あの……」

「誰ですか?」

 ミリファはそういいつつ、後ろを振り向いた。

「ミリファさん、ですか?」

 そこには、蒼色の髪と緋色の瞳をした、どこかで見たような青年が居た。

「だれ、でしょうか」

 青年は残念そうな顔をした。

 ミリファは尚も首を傾げる。

「だれ、でしょうか」

 ミリファはもう一度問う。

「……覚えて、ないのですね。

僕はアセイン=グランヴァーツです。

はじめまして」

 青年はローブに赤のリボンをしていた。

 ミリファの記憶が正しければ、それは最上級生の色である筈だ。

 本当のミリファと同じ年齢である。

「はじめ、まして……?

ミリファ=フェルマリーザと申します」

 ミリファはどこかでアセインと会った事がある気がした。

 その為に疑問符がついてしまう形となった。

「どこかでお会いしましたか……?」

「いえ、僕の勘違いだったみたいです。

では、失礼」

 アセインは優雅にローブを翻し、去っていった。

 そこに残ったアセインの魔力。

「本当に、どこで……」

——会ったのでしょう?

 それは自分に問うてもわからなかった。

 ミリファは呆然と立ち尽くす。

 暫くそうしていると、人影が殆どない事に気付いた。

「えっと、職員室に行かないと」

 ミリファは急いで駆けていった。


「もう少し早く来てほしかったね」

「ごめんなさい……」

「あ、ごめんね。

君は新入生なんだから迷うのも当然か」

ははは、と誰かに似ている笑い方をした。

「僕の名前はジェス=インスタールです。

じゃ、君のクラスであるW−3クラスに行こうか」

 ミリファはジェスについていった。

 その途中、ミリファは気になっている事を聞いた。

「あ、あの! 水Sウォーターソーサラー寮の寮長とご親戚ですか……?」

「え? あ、君は水S3寮の子なんだね。

うん、彼とは兄弟だよ。

彼が弟で僕が兄」

 ジェスは一瞬呆気にとられた表情をした。

 それを聞いたミリファは意外だと思っていた。

 弟であるルーシェの方が大人っぽい印象で、より一層兄として見える。

「意外だった?」

 そんな質問をされ、ミリファは読心術でも使えるのかと思ってしまった。

「なんでわかったのか、っていう顔をしてるね。

良く言われるんだよ、彼の方が大人っぽくて兄に見えるって」

 そういったジェスは笑顔に少しの曇りが有った。

 しかし、そんな笑顔をしたのも一瞬で、直ぐに顔をそらされた。

「着いたよ。

紹介になったら入ってきてね」

 ジェスはそれを告げると、教室の扉を開け、入っていった。

 ミリファはドキドキして、何がなんだか分からなくなっていった。

「……ということで、皆さんも気をつけて下さいね。

次に、君たちが気になっている転校生ですが、……男子よ、喜べ!綺麗な子が入ってきたぞ」

 更にはジェスがハードルを上げて、益々ミリファは硬直する。

「入ってきて良いぞ〜」

 そういわれると同時にミリファは思い切って教室の扉を開ける。

 ミリファが入ると同時にざわついた。

「うわ、綺麗……」

「かわいい子だ!」

「……負けた」

「…………ミリファ——?」

 最後は誰が言っただなんて混乱する頭の中で考えられる筈も無く、ミリファは自己紹介をした。

「初めまして、わたくしはミリファ=フェルマリーザと申します。

第5魔術師だ……ではなく、えーと、辺境の村、アルマテルから来ました。

親の都合で中途半端な時期の入学になってしまいましたが、どうぞ宜しくお願い致します」

 ミリファはうっかりと第5魔術師団に居た時の癖で、同じような紹介をしてしまうところであった。

「ミリファは……あ、カーランス君の隣みたいですね。

カーランス君はそこに居るはちみつ色の髪の眼鏡をかけた子だからー」

 ホラ、と指ジェスに指された先には綺麗なはちみつ色の髪の眼鏡をかけた少年が居た。

「はい」

 ミリファは返事をし、少年の所へと向かってゆく。

 窓側には空いている席が有ったので、ミリファはそこへ座る。

「じゃ、授業を始めます」

 真面目な顔で、授業を始める。

 一時間目はジェスの担当教科みたいだ。

 教科は元素学『水』。

 今日は水の基礎魔法『水のいしずえ』をやるみたいである。

「『水の礎』は基礎魔法で、1年の時にやりましたが、これは徐々に積み重ねないと効果が見えにくいものなのです。

故にあまり使う生徒はいませんが、『水の礎』は力、又は技術の戦いとなった時、自分を有利にできます。

教科書には書かれていませんが、『水の礎』は攻撃魔法ではなく、本来は補助魔法の分類に入ります」

 ミリファは話を聞き流そうとしていたが、一番最後の「攻撃魔法ではなく、補助魔法である」というところに疑問を持った。

 幼なじみは『水の礎』が補助魔法だといっていたからだ。

 ミリファはもう少し話を聞いてみる事にした。

「『水の礎』の本来の効果は水の威力増幅及び技術補助というなんともおいしい効果があるのです。

本来補助魔法の魔法を攻撃魔法として用いれば、無駄に魔力を持っていかれるだけです。

しかし、『水の礎』はかなりの熟練度がないと効果に期待は出来ないので無理にする必要はありません。

というか必修魔法でもありませんし。

適当に受け流しておいて下さい。

次に、違う魔法ですが……」

 そこから又、ミリファは話を聞き流す。

 ほとんどが知っている事の為だ。

 魔術師団に属する者であるため、このぐらいの知識は有った。

 時計が一時間目の終わりを知らせる。

 ピピピピッという大きな音が鳴り、授業の終わりを知らせた。

 時計に数字は無く、1時間目、5分休み、2時間目と、今の時間を文字の横にあるランプが知らせる。

 2時間目、3時間目、4時間目……すべての授業のほとんどをミリファは聞き流していた。

 5分休みには何度か質問をされたが、すぐに収まった。

 退屈なまま、放課後になった。

 部活動をしている生徒が窓側の席の為、よく見える。

「退屈……」

 ミリファはぽつりと呟く。

「何がですの?」

 振り返ると、そこにはルティリアがいた。

「ルティリア!? どうしてここに?

部活には入ってないの?」

「ここに来たのは、ミリファおねえさまとあわよくば帰れたら……と思いましたですの。

部活には入ってないですの」

「ユティリアは?」

「ユティリアは先に帰ってしまったんですの。

ですから……おねえさまと」

 ミリファは理由を聞き、微笑ましく思いながら首を縦に振り、了承の意を示す。

「じゃあ、帰りましょうですの!!」

 ルティリアはルンルンとした足取りで、教室を出た。

 ミリファもルティリアを追いかける様に、教室をでる。

 その後、密かに人影が出来た。

 小さい影と、大きな影。

[……こうも露骨に邪魔されるとは思わなかった]

[彼女は我らに勘づいているようであるから、邪魔するのも当然だろう]

[……私は次に行く]

[そうした方がよかろう]

[……許さない]

 小さな影はその言葉を最後に消えた。

[全く、彼女も難儀であるな。

雪の小さなが、最後まで妨害できると良いが……]

 そして、大きな影も消える。

 教室には誰もいなかったかの様に、静寂が教室を支配した……。


長い間お待たせしました……

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