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第13話 〜呼び方〜

 ——それは、その国では珍しく、晴れたときの事。

 私は雲一つない晴天の下に居ます。

 幼い私は花畑で遊んでいます。

 そこには春夏秋冬の花が無造作に咲き誇っていました。

 春を象徴するのは『エーリラ』の花。

 白く大きな花弁の気高き花。

 夏を象徴するのは『ルーシェ』の花。

 赤く分厚い花弁の情熱的な花。

 秋を象徴するのは『メリアス』の花。

 群青で薄くヒラヒラとした小さな花弁の大きな大輪の花。

 冬を象徴するのは『マリエラ』の花。

 この花は毒草。

 触るだけで何かしらの障害を起こしてしまう。

 なぜなら、症状を起こせばすぐに死んでしまうから。

 幼い私は他の花がある筈なのに、『マリエラ』の花を触ろうとしました。

 危ない、と思った瞬間、誰かが私を庇いました。

 そこでノイズが入り、視界も真っ暗になってしまいます。

 あそこに、誰か、居ます。

 『アノヒト』が。

 もう、誰なのか分からないけれど…………。






「ん、ぅ……」

 目を開ければそこは昨日引っ越してきた寮の天井。

「あれ、何か……大切な夢、だったような……?」

 ミリファは体を起こし、頭をひねらせる。

 暫く経っても思い出せなかったミリファは、考える事を諦めた。

「ま、仕方ないかしら。

それにしても……」

 ミリファがまた何か考えだした時、突然扉は開かれる。

「おねえさまー!

……ミリファおねえさまー?

起きたんですの〜?」

 入ってきたのは昨日の双子。

「あら、起きていましたの。

おはようございますですわ、フェルマリーザ先輩」

「フェルマリーザ先輩、かぁ……。

ごめんね、ミリファかミリファ先輩って呼んでもらえるかしら?」

 ミリファはフェルマリーザと呼ばれる事に慣れていなかった為、名で呼ぶ事を進める。

「…………ミリファ、せんぱぃ……?」

 ユティリアは恐る恐る名を呼んだ。

「うん、ありがとう、ユティリアちゃん」

「……ユティリアで良いですわ」

 ユティリアは恥ずかしそうに言う。

「ん? ユティリア……で、良いのかしら?」

 空気と化していたルティリアは二人の間に入り込んで言った。

「ぶー、ユティリアずるいんですのー!!

おねえさま? わたくしの事はルティリアとお呼び下さいですの」

 ルティリアは少しすねた様に言った。

 その様子にミリファは苦笑し、ルティリアの名を呼んだ。

「ルティリア」

「はいですのー!」

 ルティリアは元気よく返事をした。

「そういえば……今日は何月何日だったかしら?」

 ミリファは離宮に行って(誘拐?)されてからはバタバタしていたため、時間感覚が無かったのである。

「今日はユリセンの月、第三リィスの日ですわ」

 ユリセンは一番最初のアルセイヌの月から数えて三つ目の月で、第三のリィスの日は一番最初のリィルの日よりも23日違う。

 月は8つあり、日は6つ一週間である。

 日は毎月の第一リィルの日から数えてキッチリ30日ある。

「そう……。

起こしてくれて悪いのだけれど、ちょっと部屋から出てもらっていいかしら?」

「どうしてですの?」

「……ルティリア、行くのですわ」

「えっ、ユティリア〜〜。

では、わたくし達はいったん出ます。

……ユティリア〜、痛いんですの〜」

ユティリアは何かを察したのか、ルティリアの首襟を引きずって部屋を出て行った。

「ばいばーい……。

ルティリア、大丈夫かな…………」

微妙に不安な気持ちになりつつも、ミリファは2人の後ろ姿を見送った。

「はぁ……。

今日は何かしら……」

 そういいつつ、ミリファは宙から白いカードを取り出した。


『鳥籠の空色、飛び立つ事は許されない。

 しばし夢雪の中へ留まるだろう。

 始まりの合図は放たれた。

 それをどう受け取るかは人次第……』


「……? また、分からない予言が出てきたわ……」

 ミリファはカードを手放した。

 カードは一瞬のうちに消える。

「制服着なきゃ……」

 ミリファがそう思い立ったのはつい先ほど。

 学園の制服は、紺のローブ(ワンポイント可)とそのローブに付ける黄色の細いリボン(色は学年別)薄い青色のシャツ、紺系統のチェックのスカート(丈自由)である。

 基本的には紺のローブ(ワンポイント可)とリボンを着ていれば何でも良いが。

「おねえさま〜、用は済まれましたか〜?

ええい、開けてしまうんですの〜」

 ルティリアはミリファの返事も聞かずに扉を開けた。

「きゃあっ!

……はぁ、びっくりしたぁー」

「…………」

「ルティリア、迷惑をかけてしまったらごめんなさいなのですわ」

「分かっていますですのー。

けど……この部屋、うっすらと『聖』属性の感じが……」

「あら、そういえば……」

「いえ、気のせいですの。

先ほどは失礼しました、ミリファおねえさま!」

 ルティリアはミリファに何か隠すかの様にユティリアの言葉を遮った。

「ルティリア……、いえ、良いですわ。

行きましょう、先輩。

早くしなくては間に合わないです」

 はぐらかすかの様にユティリアは急かすが、時計を見れば、危ない時間であった。

「そうね、いま行くわ」

 ミリファは少し焦りつつ、部屋を後にした。

 二人の後ろを暫く歩いていると、学園が見えてきた。

「わわっ!」

 2人が突然止まってしまったため、ミリファはつまづきそうになっていた。

「どうしたの、2人共」

 2人は振り返った。

 一方は笑顔で。

 一方は小難しそうな顔で。

「あそこに学園がみえているんですの」

「う、うん?」

「行けますよね。

わたくし達は後から追いかけますから……いいですわね?」

 ユティリアの気迫に押されながら、ミリファはコクコクと頷いた。

 その後、ユティリアから離れるかの様にミリファは走り去っていった。

「……どうかしたのです?

今朝の事で何かあったのですわ?」

「…………今朝の、『聖』。

あれは『彼女』の気配がしたんですの」

ルティリアはルティリアでは考えられない程冷たい声で言う。

「それはわたくしも察知致しましたわ

けれど……」

「……『彼女』が、関与しているとなれば話は別ですの。

もしかしたら、火の第二位も来られている可能性を否定できなくなったんですの」

「火の第二位は……、あの人は、というよりは火の眷属は光の第一位様が動かない限り、そうそう動かない方々ですわ」

「光の第一位様が居るとすれば?

もしくはその同位体を守ろうとすれば」

 ルティリアの言葉にユティリアはハッとなってからため息をついた。

「……来ますですわ」

「ということですの。

それに、夢の第五位があの子を疎んでいるみたいですの」

「夢の第五位が?

彼女ならあり得るのですわ。

大方、彼女が関わっていることが許せないのでしょう」

「あの子があまり『稀少技能アビリティ』を使わないでいてくれると良いんですの……」

「使わなくても狙われるのは必須」

「でも、」

 ルティリアは弁解の為、ユティリアに意見しようとするが、ユティリアはそれを遮る。

「あの子は、ミエラの様に契約しているわけでもなく『力』が使えているのですから、当然なのですわ」

「……見た未来にならないように」

「記憶の未来から外れる様に」

 二人は手を組み、祈ったーーーー



少々長かったため、分けて次もミリファ側でお送りします。

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